ソユーズTM-13

ソユーズTM-13ミッション

ソユーズTM-13（Soyuz TM-13）は、宇宙ステーション「ミール」への人員輸送と実験を目的とした、ソビエト連邦による13回目の有人宇宙飛行ミッションです。このミッションは「ドンバース（ドネツ炭田）」というコールサインで呼ばれました。

特に注目すべきは、乗組員構成の異例さでした。通常、ソユーズ宇宙船の3名の乗組員は船長、フライトエンジニア、そして研究宇宙飛行士で構成されますが、ソユーズTM-13ではフライトエンジニアが搭乗せず、船長と2名の科学者が乗り込みました。これは、ソビエト連邦がオーストリアと、当時ソビエト連邦のカザフ・ソビエト社会主義共和国として独立を間近に控えていたカザフスタンからの宇宙飛行士を受け入れたことによるものでした。

打上げ時の乗組員は、経験豊富なソビエト連邦の宇宙飛行士、アレクサンドル・ヴォルコフ（3回目の宇宙飛行）が船長を務め、オーストリア代表としてフランツ・フィーベック（初の宇宙飛行）、そしてカザフスタン代表としてトクタル・アウバキロフ（初の宇宙飛行）が搭乗しました。

これらの国際的な搭乗が実現した背景には、それぞれの国の事情がありました。オーストリアはフィーベック氏のミール滞在ミッション実現のために700万ドルを費用として支払い、一方のカザフスタンは、独立後もバイコヌール宇宙基地をソビエト連邦（後にロシア）が引き続き使用できる権利と引き換えに、カザフスタン人宇宙飛行士であるアウバキロフ氏の参加を取り付けたとされています。

軌道上では、科学者として参加したフィーベック氏とアウバキロフ氏は、それぞれの母国を宇宙から写真に収める活動を行いました。また、材料学や医学分野など、事前に計画されていた様々な科学実験に取り組みました。

ミールでの共同作業を終えた後、短期滞在組であったフィーベック氏とアウバキロフ氏は、既にミールに滞在していたアナトリー・アルツェバルスキー氏と共に、先にミールへ到着していたソユーズTM-12宇宙船に乗り込み、地球へ帰還しました。一方、同じくソユーズTM-12でミールに到着していたセルゲイ・クリカレフ氏は、彼らの帰還後もミールに留まり、当初の予定よりさらに約半年間滞在を延長することになりました。

ソユーズTM-13宇宙船自体は、その後もミールに約175日間接続されていました。そして、次にミールへ到着したソユーズTM-14に乗って来たドイツ人宇宙飛行士、クラウス＝ディートリッヒ・フラーデ氏を新たな乗組員として迎え入れ、船長のヴォルコフ氏、長期滞在を終えたクリカレフ氏、そしてフラーデ氏の3名を乗せて地球への帰途に就きました。

このミッションの帰還には、歴史的な出来事が伴いました。ソユーズTM-13は、打上げ時にはまだソビエト連邦の一部であったカザフ・ソビエト社会主義共和国のバイコヌール宇宙基地から飛び立ちましたが、クリカレフ氏が帰還した際には、ソビエト連邦は既に解体され、カザフスタンは独立した国家となっていました。このため、ソビエト連邦から宇宙へ旅立ち、ソビエト連邦が存在しない地球へ帰還したセルゲイ・クリカレフ氏は、「最後のソ連人」として、歴史の一コマとして記憶されることになりました。ソユーズTM-13ミッションは、このようにソビエト連邦の終焉という激動の時代背景を色濃く反映した、国際色豊かな宇宙飛行だったと言えます。

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