ソーホー (ロンドン)

ロンドンのソーホー地区：歴史と変貌

ロンドン中心部、ウェストミンスターにあるソーホー地区は、その歴史を通して幾度となく姿を変えてきました。かつては牧草地だったこの地は、17世紀に「ソーホー」と名付けられ、その後、複雑な開発の歴史を経て、現代のおしゃれな街へと変貌を遂げました。

17世紀：開発の始まりとユグノー移民

17世紀、ソーホーは王室関係者による土地所有と開発が始まりました。チャールズ2世による土地の寄贈、そして開発業者による建設が進む一方、王室からの土地の分割や移譲が複雑に絡み合い、ソーホーの開発は決して一筋縄ではいきませんでした。近隣のブルームズベリーやメイフェアのような富裕層向けの開発とは異なり、ソーホーは独特の発展を遂げます。

1688年のユグノー難民の流入は、ソーホーの文化に大きな影響を与えました。フランス人地区として知られるようになり、ソーホー・スクエアのフランス人教会は、この時代の移住者たちの信仰の拠り所となりました。しかし、18世紀半ばまでに上流階級の住民は転出していき、ソーホーは徐々に異なる様相を呈していきます。

18世紀～20世紀前半：歓楽街としての発展

19世紀半ば以降、ソーホーには音楽ホールや劇場、そして売春婦が入り込み始めます。20世紀に入ると、安価な飲食店が軒を連ね、知識人や芸術家たちが集まる地区へと変貌を遂げました。1930年代から1960年代初めにかけては、パブが作家や詩人、芸術家の溜まり場となり、その賑やかさは街のシンボルとなりました。

20世紀後半：スウィンギング・ロンドンと現代

1960年代のスウィンギング・ロンドン時代には、ソーホー、特にカーナビー・ストリートは、モッズ文化やサイケデリックなファッションの中心地として世界的な注目を集めました。マリー・クヮントなどのファッションデザイナーや、ザ・フー、ローリング・ストーンズなどのミュージシャンが、この街から世界へと羽ばたいていきました。

しかし、20世紀後半には、かつての歓楽街としての面影は徐々に薄れていきます。高級レストランやメディア関連企業が進出し、街の雰囲気は大きく変化しました。性産業の店舗は減少、そして今日では、おしゃれなブティックやゲイバー、レズビアンバーなどが立ち並ぶ、洗練された地区として知られています。

ソーホーの文化と文学

ソーホーは、多くの芸術家や作家にインスピレーションを与えてきました。ディラン・トマスやジョージ・メリーといったアーティストたちの作品には、ソーホーの独特の雰囲気が反映されています。また、ロバート・ルイス・スティーヴンソンの『ジキルとハイド』では、主人公のハイドがソーホーに家を構えるという設定が用いられています。

世界各地の「ソーホー」

ソーホーという地名は、娯楽や飲食店街を指す言葉として、世界各地で使用されるようになりました。香港、ニューヨーク、ブエノスアイレスなど、多くの都市に「ソーホー」と呼ばれる地区が存在し、それぞれの街の個性と発展を反映した独自の文化を形成しています。

まとめ

ソーホー地区の歴史は、ロンドンの発展そのものを反映するものです。牧草地から始まり、ユグノー移民の流入、歓楽街としての発展、そして現代のおしゃれな街への変貌と、その歴史は複雑で多様です。しかし、常に変化を続けながら、独自の文化と魅力を保ち続けているソーホーは、これからも世界中の人々を魅了し続けるでしょう。

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