ソー・デルタ

ソー・デルタ（Thor-Delta）

ソー・デルタは、1960年代にアメリカ合衆国によって運用された3段式の宇宙ロケットです。単に「デルタ」、あるいは「デルタDM-19」とも呼ばれていました。

このロケットは、軍事用ミサイルとして開発されたソーロケットを基に、人工衛星打ち上げ用に改良されたソー・エイブルロケットの派生型にあたります。ソー・デルタは、その後のアメリカの宇宙開発を支える重要なロケットシリーズとなる「デルタロケット」の最初の機体として位置づけられています。

ソー・デルタの大きな特徴は、ソーミサイル由来の一段目と、高性能な「デルタステージ」と呼ばれる上段ロケットを組み合わせた点です。この組み合わせは非常に効果的であることが実証され、以降のデルタシリーズにおいて基本的な設計思想として長く引き継がれることになります。事実、ソー・デルタの後継にあたるデルタロケットの発展形は、2011年時点でも現役として運用されていました。

技術的な構成としては、以下の3つの段から成り立っていました。

1. 一段目: 液体燃料ロケットであるソーミサイルを改修して使用しました。ケロシンと液体酸素を推進剤とし、ロケットダイン社のLR79エンジンを搭載していました。
2. 二段目: エイブルステージを改良した「デルタステージ」でした。これは、かつて人工衛星打ち上げに用いられたヴァンガードロケットの上段設計を参考にしています。推進剤には硝酸と非対称ジメチルヒドラジンという液体燃料を使用し、AJ10-118エンジンを備えていました。特に、このデルタステージには、宇宙空間での正確な軌道投入や、必要に応じてエンジンを再び点火するために、姿勢を細かく調整するためのガス噴射装置（姿勢制御ジェット）が装備されていました。
3. 三段目: 固体燃料を使用するAltairロケットモーターが用いられました。

ソー・デルタロケットは、1960年代に合計12回の打ち上げを行いました。全てのミッションは、フロリダ州にあるケープカナベラル空軍基地の第17発射施設（Launch Complex 17）から実施されました。打ち上げパッドとしては、テルスター1号の打ち上げにはパッドBが、その他の打ち上げにはパッドAが使用されました。

打ち上げの成功率は非常に高く、12回のうち11回が成功しました。最初の打ち上げであったエコー1Aの軌道投入のみが不完全でしたが、それ以降のミッションは全て成功を収めています。

ソー・デルタが打ち上げた人工衛星には、宇宙開発史における画期的なものが含まれています。例えば、世界初の受動型通信衛星であるエコー1A（ただし、この打ち上げは部分的な成功に留まりました）や、イギリス初の人工衛星として知られるアリエル1号があります。さらに、世界初の能動型通信衛星であり、大西洋を越えたテレビ中継を実現したテルスター1号も、このソー・デルタによって宇宙へと送り出されました。

このように、ソー・デルタは黎明期の宇宙開発において、様々な種類の重要な人工衛星を軌道に送り出す役割を果たしました。ソーミサイルとデルタステージの組み合わせという基本的な設計は、その後のデルタロケットシリーズに引き継がれ、長期間にわたりアメリカの宇宙アクセスを支える礎となったのです。

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