非対称ジメチルヒドラジン

非対称ジメチルヒドラジン（UDMH）について

非対称ジメチルヒドラジン、略してUDMHは、ヒドラジンの誘導体であり、主にロケットエンジン燃料として利用されています。化学的には「1,1-ジメチルヒドラジン」とも呼ばれ、無色で透明な液体です。この化合物は、特に加熱時にも安定しているため、ロケット推進においては重要な役割を果たしています。

UDMHの物理的・化学的特性

UDMHは、アンモニアに似た臭いを持ち、吸湿性があり、水に非常に溶けやすい性質があります。さらに、UDMHは空気にさらされると、黄色に変色しやすくなります。この特性は、取り扱い時に注意が必要です。また、常温で気化しやすく、引火点が非常に低いため（-10度）、取り扱いに際しては高い注意が必要です。

UDMHの用途

UDMHは、特にロケットエンジンの推進剤としての用途が広く、さまざまな酸化剤と組み合わせて使用されます。代表的な酸化剤には、四酸化二窒素や赤煙硝酸、液体酸素があります。UDMHは、ヒドラジンに比べて高温下でも安定しているため、ヒドラジンの代わりに使用したり、混合したりすることが可能です。

この化合物は、特に即応性が求められるミサイルや人工衛星、スペースシャトルの姿勢制御に利用されています。UDMHは自己着火性燃料であるため、酸化剤と混ぜるだけで燃焼を開始します。これにより、高い信頼性が求められるミッションにおいても安心して使用できます。ただし、ロケットエンジンの始動時には他の燃料（通常はケロシン）に切り替えられることが一般的です。

UDMHの毒性

UDMHは強い発火性を持ち、皮膚や粘膜に対して腐食性があります。さらに、発がん性物質として国際がん研究機関によってグループ2Bに分類されており、発がん性の可能性があるとされています。日本では、消防法上で危険物の第5類（自己反応性物質）に指定されており、労働安全衛生法では特定第2類物質としても管理されています。このため、UDMHを取り扱う際には安全対策が非常に重要です。

UDMHのロケットエンジンでの使用例

UDMHの利用例としては、以下のようなロケットエンジンがあります。これらは国際的に広く使用されているモデルです。

• - ヴァイキングII、IV、V：アリアン1～4の各段目エンジン。
• - RD-251：ソ連製R-36M ICBMの1段目エンジン。
• - RD-253：ソ連製のプロトンロケットの1段目エンジン。
• - YF-20B：中国の長征シリーズの1段目エンジン。

これに加え、アメリカ合衆国のMGM-52 ランスおよびフランスのアリアンスペースによる「ヴェガ」の4段目エンジンなど、多くの用途でUDMHが活用されています。

結論

このように、非対称ジメチルヒドラジン（UDMH）は、さまざまなロケットエンジンにおいて重要な役割を果たしている有機化合物です。高温安定性や即応性に優れている一方で、取り扱いには十分な注意が必要な物質でもあります。今後もその特性を活かした進化が期待されます。

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