ソー・バッド・レビュー

関西から登場した伝説的な8人組ソウルファンクバンド、それがソー・バッド・レビューです。1975年、ウエスト・ロード・ブルース・バンドを脱退したギタリスト、山岸潤史が核となり結成されました。日本の音楽史において、短期間ながらも強烈な光を放ったグループです。

バンド誕生の背景には、ドラマーのベーカー土居が渡米を経て温めていた構想がありました。彼は、かつて石田長生や上田正樹らと共に活動していた「上田正樹とバッドクラブバンド」の解散後、新たな音楽表現を追求しようとしていたのです。そのアイデアに共鳴する形で、北京一、砂川正和（ボーカル、パーカッション）、山岸潤史、石田長生（ギター）、永本忠（ベース）、国府輝幸（キーボード、現・国府利征）、チャールズ清水（キーボード）、そして土居という実力派ミュージシャンが集結し、ソー・バッド・レビューの布陣が固まりました。

バンド結成の動きが見え始めたのは1975年の夏です。同年8月8日には、大阪・万博記念公園で開催された「8.8 ROCK DAY」に「山岸潤史スーパーグループ」として出演。この時点では、まだ正式なバンド名が決まっていませんでしたが、ボーカルの北京一、石田、永本、土居、清水が参加しており、後のソー・バッド・レビューの主要メンバーが顔を揃えていました。このライブのわずか3日後、山岸はアメリカへ渡りますが、11月下旬には帰国。この頃までにメンバーが確定し、バンド名が正式に「ソー・バッド・レビュー」と決定されました。このユニークな名前は、ボーカルの北京一が感銘を受けた「Sooo Baad!（最高！）」という言葉に由来しています。

活動開始後、バンドは精力的に音楽制作に取り組みます。1976年4月には、遠くロサンゼルスに渡り、名門エレクトラ・スタジオでのレコーディングを敢行しました。同年8月8日には、前年に続き「8.8 ROCK DAY」のステージに立ち、その存在感を示しました。しかし、この直後、キーボーディストのチャールズ清水がバンドを離れることになります。これは、彼が高校卒業後にアメリカへ留学するためで、結成前からメンバーには伝えられていたことでした（ただし、後に家庭の事情で帰国し、国内の大学へ編入学しています）。

バンドにとって重要な節目となったのは、1976年8月25日にリリースされたデビュー・アルバム『ソー・バッド・レビュー』です。彼らのグルーヴ感溢れるソウルファンクサウンドは、当時の日本の音楽シーンに新たな波をもたらしました。しかし、この輝かしいデビュー作発表からわずか数ヶ月後の11月頃、バンドはその活動に終止符を打ちます。東京・大隈講堂で行われたライブが、オリジナルメンバーによる最後のステージとなりました。なぜこれほど短期間で解散してしまったのか、明確な理由は明らかにされていませんが、チャールズ清水は「メンバーそれぞれの個性が非常に強かったためではないか」と後に語っています。

ソー・バッド・レビューとしての活動期間は短かったものの、メンバー個々の才能はその後も日本の音楽界で輝き続けました。解散後、彼らはそれぞれソロ活動や新たなバンドを結成し、多岐にわたるジャンルで活躍します。その過程で、石田と砂川、国府が参加した「ザ・ボイス・アンド・リズム」、山岸と石田による「勉強トリオ」、土居、国府、永本が集った「ベーカーズ・ショップ」、そして山岸と清水による「MYX」など、かつての仲間同士が再び共に演奏する機会が数多く生まれました。彼らの間に生まれた音楽的な絆は、バンド解散後も途切れることなく続いたのです。

年月が流れ、残念ながらバンドメンバーの訃報も届くようになりました。2004年10月11日にはボーカルとパーカッションを担当した砂川正和が、そして2015年7月8日にはギタリストの石田長生が、それぞれこの世を去りました。

しかし、ソー・バッド・レビューの音楽は忘れられることはありませんでした。2014年7月25日、多くの音楽ファンの熱い期待に応える形で、フジロックフェスティバルにて一日限定の再結成ライブが実現します。このステージには、オリジナルメンバーから北京一、山岸潤史、石田長生、永本忠、ベーカー土居、チャールズ清水の6人が集結。惜しくも砂川正和は参加できませんでしたが、往年のグルーヴが苗場の地に響き渡り、伝説のバンドの健在ぶりを示しました。

ディスコグラフィーは以下の通りです。
シングル:
最後の本音／おおきにブルース (1976年)
アルバム:
ソー・バッド・レビュー (1976年) - デビューアルバム
ライブ! (1977年) - 1976年のライブ音源を収録
ジ・アザー・サイド・オブ・ソー・バッド・レビュー (2022年) - 1976年1月の貴重なライブ音源
オムニバス・アルバム:
'75 8.8 ROCK DAY (1975年) - 「山岸潤士スーパーグループ With 北京一／With 北京一&石田長生」名義で2曲収録

ソー・バッド・レビューは、その活動期間こそ短かったものの、日本のソウルファンクシーンに確かな足跡を残しました。卓越した個々のプレイヤーが集結し、生み出したタイトなアンサンブルと圧倒的なグルーヴは、現在でも多くの音楽ファンに語り継がれています。短い閃光のように燃え尽きた彼らの音楽は、形を変えながらも今なお影響を与え続けています。また、交流のあった加川良がアルバム収録曲に詞を提供するなど、ジャンルを超えた交流も彼らの活動の一面を物語っています。

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