ゾウゲカモメ

ゾウゲカモメ

チドリ目カモメ科に分類される鳥類の一種で、学名を Pagophila eburnea といいます。ゾウゲカモメ属（Pagophila）にはこの種のみが属しており、カモメの仲間でありながら独特の生態や特徴を持っています。その名前は、成鳥が全身を覆う美しい象牙（アイボリー）色の羽毛に由来しています。極地の厳しい環境に適応した、印象的な姿を持つ鳥です。

形態

全長は約43センチメートル、翼を広げた時の長さ（翼開長）はおよそ110センチメートルです。体つきは比較的ずんぐりしており、足が短く見えます。

成鳥は、夏の繁殖期には全身が真っ白な羽毛に覆われます。嘴は青灰色を基調とし、その先端は鮮やかな黄色です。足は黒色をしています。冬になると、嘴の色合いがわずかに淡くなる傾向が見られます。

幼鳥は成鳥とは異なり、目の前方の顔の部分がやや黒ずんで見えます。また、翼には黒っぽい小さな斑点が散らばっているのが特徴です。これらの黒い部分は成長とともに徐々に消失し、成鳥の純白な姿へと変化していきます。

オスとメスで外見上の違いはほとんどなく、雌雄同色です。

生態

繁殖期以外の季節は、主に海岸線や外洋の氷が張っていない海域などで生活しています。

食性は主に動物質で、多様なものを利用します。魚類を捕らえるほか、陸上や海上で見つかる動物の死骸や、アザラシなどの海獣の排泄物、さらには他の海鳥の雛や卵なども食べることがあります。これは、極地の限られた環境下で生き抜くための適応と考えられます。

繁殖は卵生で行われ、繁殖期は通常7月から8月にかけてです。営巣場所は海岸線や岩場などで、地面に草や海藻などを敷き詰めて巣を作ります。繁殖形態としては、単独で営巣するのではなく、数十羽から数百羽程度の比較的まとまった集団、いわゆるコロニーを形成して繁殖することが知られています。これにより、捕食者からの防御や情報交換などに利点があると考えられます。

空を飛ぶ際には、一般的なカモメ類と比較して、ゆっくりと羽を羽ばたかせているように見えるのが特徴です。鳴き声は、「キューイ」や「クリー」といった声を発します。

分布

繁殖は、グリーンランドやカナダ、ロシアなどの北極圏に点在する島々といった、地球上で最も高緯度にあたる極限的な地域で行われます。北半球で繁殖する鳥類の中でも、特に北方に位置する数少ない種の一つです。

冬期は、繁殖地からやや南下した海域で過ごします。流氷域の縁などで見られることが多いとされています。

日本においては、本来の生息域から大きく離れて飛来した「迷鳥」として記録されています。過去に北海道、青森県、千葉県でごくわずかに観察された事例があるのみで、日本国内で出会える機会は極めてまれです。

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