象牙

象牙（ぞうげ）

象牙は、ゾウの牙や歯から得られる硬くて白い物質であり、主成分は象牙質です。多くの哺乳類の牙は犬歯の発達によって形成されますが、ゾウの場合は門歯が特に発達しているという点が特徴的です。ゾウにとって、象牙は鼻と同様に、食べ物を探すための重要な道具として機能しています。

この美しい材質は加工が容易であるため、古代から芸術や工芸品、製造業において非常に重宝されてきました。象牙の使用例としては、象牙彫刻や義歯、ピアノの鍵盤、扇子、ドミノなどがあります。象牙以外にも、マンモスやセイウチ、カバ、マッコウクジラ、シャチ、イッカク、イボイノシシの牙も利用されてきました。特に古代エジプトからラテン語を経て「アイボリー」と呼ばれるようになり、商業的に関心がある哺乳類の牙を広く指す用語としても認識されています。

象牙の用途

工芸品

象牙はその優れた加工性から、工芸品としても多く利用されています。紫檀や黒檀と色彩のコントラストが美しく、高級感があります。特に日本においては、印章のための上質な材料として重宝され、その歴史は古く、ワシントン条約が締結されるまでは最も多く輸入されていた国でした。その後は代替品の利用が進んでいます。

楽器

楽器製造においても重要な素材であり、特に三味線の撥や箏の爪に用いられています。象牙はその適度な弾力性と、手との馴染みに優れ、多くの音楽分野で好まれる素材でもあります。ピアノの鍵盤の素材としても長い歴史がありましたが、最近ではアクリル樹脂に置き換えられています。

医療

伝統的に漢方薬にも利用され、肝臓がんに効果があるとされる象牙屑（牙の粉）が所持されています。

象牙と絶滅危惧種

象牙の取引は、アフリカゾウやアジアゾウなどの絶滅危惧種に関して、国際的に厳しく規制されており、ワシントン条約によって、取引は禁止されています。日本においても象牙市場は縮小傾向にあり、依然として合法市場が存在するものの需要が減り続けています。しかしながら、印鑑や工芸品の製造用途など、一部では依然として需要があります。

日本の象牙の歴史

象牙の使用は古代から見られ、正倉院の宝物や鎌倉時代の工芸品においてもその姿が残っています。江戸時代に入ると、象牙工芸は急発展し、明治以降は国際的にも評価されることとなりました。しかし、環境保護の観点から近年ではその取引が厳しく規制されるようになっています。

日本の象牙市場については、2016年時点で市場の規模がピーク時の10%程度に縮小しているとの報告がありますが、依然として印鑑製造に多く利用されている実情があります。

象牙貿易と世界的な取り組み

ワシントン条約により、象牙の国際取引は原則として禁止されていますが、アフリカ諸国においては依然として密猟や違法取引が行われる現状があります。特に、密猟は武装勢力による経済活動の一環としても利用されています。

また、象牙を巡る国際的な意見の食い違いは依然として存在し、取引を再開することを求める声もあります。これに対抗する形で、密猟撲滅に向けた国際的な取り組みも進められています。日本国内では適正な取引を目指す動きが強まっており、業界を取り巻く状況は複雑さを増しています。今後も、動物の持続可能な利用に関する意見が分かれる中で、象牙の利用は注目され続けることでしょう。

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