ゾンビ (映画)

映画『ゾンビ』解説

『ゾンビ』（原題: Dawn of the Dead）は、1978年に公開されたジョージ・A・ロメロ監督によるホラー映画です。この作品は、ゾンビ映画というジャンルを確立しただけでなく、その後の多くの作品に影響を与えた金字塔として知られています。ダリオ・アルジェントが音響効果、ヨーロッパ公開版の監修、一部プロデュースを担当し、その独特な映像表現と音楽が、映画の魅力を高めています。

ストーリー

原因不明の現象により、死んだはずの人間がゾンビとして蘇り、生者を襲い始めるという未曾有の事態が発生します。フィラデルフィアのテレビ局で働くフランと恋人のヘリコプターパイロット、スティーブンは、街からの脱出を決意。スティーブンの友人であるSWAT隊員のロジャーと、彼の同僚ピーターと共に、ヘリコプターで逃亡を開始します。ゾンビが蔓延する世界で、彼らが辿り着いたのは巨大なショッピングモールでした。そこはゾンビの巣窟と化していましたが、豊富な物資が手付かずのまま残されていたため、4人はモールに滞在することを決意します。

しかし、ある日、ゾンビ対策としてモールの入り口をトラックで塞ぐ作業中に、ロジャーがゾンビに噛まれてしまいます。封鎖は成功したものの、ロジャーは急速に容態が悪化。ゾンビ化してしまったロジャーは、ピーターによって射殺されます。絶望的な状況の中、武装した暴走族集団がモールを襲撃。人間同士、そしてゾンビも巻き込んだ壮絶な戦いが繰り広げられます。

登場人物

主要人物

ピーター・ワシントン
冷静沈着なSWAT隊員。リーダーシップを発揮し、仲間をまとめます。追い詰められた状況でも現実を直視し、的確な判断を下します。暴走族の襲撃後、一度は絶望から自殺を試みますが、思いとどまり、最終的にはフランと共にヘリで脱出します。
フランシーン・パーカー
通称フラン。スティーブンの恋人で、テレビ局員です。当初は消極的でしたが、ピーターから銃の扱い方を、スティーブンからヘリの操縦を学び、積極的に行動するようになります。物語終盤では、自らヘリを操縦し、ピーターと共に脱出します。
スティーブン・アンドリュース
フランの恋人で、ヘリコプターのパイロット。ピーターからは「フライボーイ」と呼ばれています。物語終盤、暴走族との戦闘で負傷し、ゾンビ化。ピーターによって射殺されます。
ロジャー・デマルコ
SWAT隊員でスティーブンの友人。調子に乗りやすい性格が災いし、ゾンビに噛まれてしまいます。ゾンビ化した後、ピーターによって射殺されます。

その他

ウーリー
差別主義的なSWAT隊員。プエルトリコ人を射殺したため、ピーターによって射殺されます。
ロッド・タッカー
SWAT隊員。アパートに立てこもったプエルトリコ人に射殺され、本作で最初の犠牲者となります。
ジェフ
SWAT隊員。ゾンビを倒すも恐怖から自殺します。
クリス
黒人のSWAT隊員。その後の生死は不明です。
ルディ
暴走族集団のリーダー。モールを襲撃し、ピーターたちと戦います。その後の安否は不明です。
ブレイズ
暴走族の一員。鉈を使いゾンビを攻撃します。ピーターによって射殺されます。
マウジー
暴走族の一員。トミーガンを装備。ピーターに狙撃され、ゾンビに喰い殺されます。
スレッジ
暴走族の一員。スレッジハンマーを使いゾンビを攻撃します。ゾンビに喰い殺されます。
ペドロ
暴走族の一員。銃器類を扱います。ゾンビに喰い殺されます。
ミゲル
　　プエルトリコ人のアパートでゾンビ化。隊員によって射殺されます。

映画のバージョン違い

この作品には、いくつかのバージョンが存在します。

米国劇場公開版
北米で公開されたバージョン。ロメロ独特の暗い演出が特徴です。
ダリオ・アルジェント監修版
アジアやヨーロッパで公開されたバージョン。サバイバルアクション風の編集で、ゴブリンの音楽が多用されています。
日本劇場公開版
ダリオ・アルジェント監修版を元に、日本独自の変更が加えられたバージョン。惑星爆発シーンが追加されています。
日本初公開復元版
日本劇場公開版を復元したバージョン。CGで冒頭シーンを再現しています。
ディレクターズ・カット版
　　ロメロがカンヌ国際映画祭へ出品するために編集したバージョン。ショッピングセンター内の生活描写が長いです。
ラフカット版
アルジェントにも送られたノーカットオリジナル版とされるもの。約160分。未公開。
ドイツ語ファイナルカット版
アルジェント版をベースに、ディレクターズカット版のシーンを加えたもの。
製作45周年コレクターズ・エディション版
　　アルジェント版とディレクターズ・カット版を繋ぎ合わせたもの。

テレビ放送バージョン

深沢哲也版（サスペリア版）
テレビ東京で放映されたバージョン。音楽が『サスペリア』などの楽曲に差し替えられています。
河野基比古版（再放送版）
テレビ東京で放映されたバージョン。音楽が日本劇場公開版に差し替えられています。

幻のエンディング

草稿では、ピーターとフランが自殺するという内容のエンディングが予定されていましたが、実際に撮影はされませんでした。

サウンドトラック

本作のサウンドトラックは、通常盤とコンプリート盤の2種類が発売されています。ショッピングモール内で流れる呑気な音楽"The Gonk"も収録されています。

映像ソフト

VHS、レーザーディスク、DVD、Blu-ray Discなど、様々な形態で映像ソフトが発売されています。

ノベライズ

ジョージ・A・ロメロ自身によるノベライズ版も存在します。

備考

ナタで頭を割られるゾンビ役のレナード・ライズは、ホラー映画コンベンションの常連であり、自身のグッズを販売しています。また、日本初公開復元版の上映会には、キャストが登壇しました。

リメイク

2004年には、本作のリメイク作品『ドーン・オブ・ザ・デッド』が公開されました。

『ゾンビ』は、単なるホラー映画としてだけでなく、社会風刺的な要素も含まれており、時代を超えて多くのファンを魅了し続けています。

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