ゾンマーフェルト数

ゾンマーフェルト数：流体潤滑軸受の潤滑状態を評価する指標

流体潤滑された軸受と回転軸の潤滑状態を評価するために用いられる無次元量が、ゾンマーフェルト数です。オイルなどの潤滑油によって潤滑されている軸受では、回転する軸によって潤滑油が軸と軸受の間に引き込まれ、その油膜によって軸が支えられる流体潤滑という現象が起こります。この油膜の厚さや圧力は、軸の寸法、潤滑油の粘度、軸への荷重、軸の回転数といった複数の要因に影響されます。

ゾンマーフェルト数は、これらの要因を統合的に評価する指標として非常に有用です。軸受の設計や状態監視において、適切な潤滑状態を確保するための重要な役割を果たしています。

ゾンマーフェルト数の算出

ゾンマーフェルト数Sは、以下の式で表されます。

S = (ηn / P) (r / c)²

ここで、各記号は以下の通りです。

η：潤滑油の粘度（Pa・s）
n：軸の回転数（s⁻¹）
P：軸受面圧（Pa）
r：軸径
c：軸受隙間

この式からわかるように、ゾンマーフェルト数は粘度η、回転数n、軸径rに正比例し、面圧P、軸受隙間cの2乗に反比例します。粘度が高く、回転数が高く、軸径が大きいほど、また面圧が小さく、軸受隙間が小さいほど、ゾンマーフェルト数は大きくなります。

ゾンマーフェルト数の意味と応用

ゾンマーフェルト数が大きくなるほど、油膜厚さは増大し、軸と軸受間の摩擦が小さくなります。これは、より良い潤滑状態を示しています。逆に、ゾンマーフェルト数が小さくなると油膜が薄くなり、軸と軸受が直接接触する可能性が高まり、摩耗や損傷のリスクが増加します。

実際には、ゾンマーフェルト数と軸の偏芯率の関係を示すグラフを用いて、軸受の潤滑状態を評価します。このグラフから、適切な油膜厚さが確保されているか、つまり充分な隙間が確保されているかを判断できます。ゾンマーフェルト数が大きすぎると、潤滑油の消費量が増加したり、エネルギーロスが生じたりする可能性があり、小さすぎると軸受の損傷につながる可能性があります。

したがって、設計段階においては、目的とする用途や条件に合わせて適切なゾンマーフェルト数となるように、軸受の寸法や潤滑油の選定を行うことが重要です。また、運転状態においては、ゾンマーフェルト数を監視することで、軸受の異常を早期に検知し、適切なメンテナンスを行うことができます。

ゾンマーフェルト数の歴史

ゾンマーフェルト数は、ドイツの物理学者アーノルト・ゾンマーフェルトに因んで名付けられました。彼は量子力学の分野でも大きな功績を残した著名な科学者ですが、流体潤滑に関する研究も行っていました。彼の研究成果に基づいて、ゾンマーフェルト数は軸受設計において重要な指標として広く利用されるようになりました。

まとめ

ゾンマーフェルト数は、流体潤滑軸受の潤滑状態を評価する上で非常に重要な無次元量です。その値を適切に制御することで、軸受の寿命を延ばし、信頼性を向上させることができます。軸受設計、メンテナンス、そして状態監視において、ゾンマーフェルト数は不可欠な指標であり、その理解は機械工学において非常に重要です。

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