タイにおける2019年コロナウイルス感染症の流行状況

タイにおける新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の流行状況

感染のタイムライン

2020年1月13日、タイ保健省は国内初の感染症例を発表しました。これは中国以外での最初の確認例であり、武漢市出身の61歳女性が入国時に発熱を訴え、陽性と診断されました。その後、1月17日には同じく武漢市出身の74歳女性の感染が確認され、1月22日には初のタイ人女性の感染が確認されました。1月末には、タクシー運転手など、中国への渡航歴のない感染者も確認され始め、市中感染の拡大が懸念されました。

2月に入ると、感染者の確認ペースは加速し、日本人旅行者の渡航歴を持つタイ人夫婦や、北海道を訪れた後に感染が確認された例など、感染経路が多様化しました。2月末には韓国からの帰国者の感染が確認され、3月に入ると、イタリアやイランからの帰国者、さらに英国や香港からの入国者の感染も確認されました。3月には、ルンピニー・スタジアムでのムエタイの試合観戦者を中心に集団感染が発生し、感染者数が急増しました。その後も、国内接触者やナイトクラブ、空港などの様々な場所での感染が確認され、感染拡大は続きました。

12月には、サムットサコン県の鮮魚市場で外国人労働者を中心とした大規模なクラスターが発生し、576人もの感染者が確認されました。

政府の対応

タイ政府は、2020年1月3日に中国からの乗客に対する検査を開始しました。その後、検査対象は日本、シンガポール、香港、マカオ、韓国、台湾など、感染が拡大している地域からの入国者にも拡大されました。2月には、クルーズ船の入港を拒否する一方で、入港を許可された船の乗客には厳格な検査を実施しました。また、感染拡大に備え、各州にCOVID-19検査を実施できる病院を設置しました。検査体制の強化も進められ、5分で結果が出る簡易検査キットの開発も行われました。

3月22日には、感染が流行している地域からの入国者に対し、診断書の提示と14日間の政府管理下での検疫を義務付けました。これにより、中国、韓国、イタリア、イランからの入国者に対する規制が強化されました。

影響

経済

航空業界は大きな打撃を受けました。バンコク・エアウェイズは、幹部の給与削減やフライト数の減少、一部路線のキャンセルを余儀なくされ、スタッフは無給休暇を取得することになりました。タイ国際航空は経営危機に陥り、タイ政府に救済を要請しましたが、最終的には経営破綻しました。

教育

ブックフェアの開催が中止され、大学では授業が中断されました。これは、職員や学生間の感染を防止するための措置でした。

スポーツ

多くのスポーツイベントが延期されました。ムエタイの試合は無観客試合として開催されましたが、後に延期されました。サッカーの試合も延期され、ロードレース世界選手権タイグランプリやバンコク国際モーターショーも延期となりました。

観光

パタヤのテーマパークは一時的に閉鎖され、ソンクランのお祝いも延期されました。観光客の集まるイベントが中止されたことで、観光業界は大きな影響を受けました。

他国への感染拡大の可能性

タイを訪れた旅行者が帰国後に感染が確認された例が複数報告されています。韓国、ドイツ、オーストラリア、インドなどで、タイへの渡航歴のある感染者が確認され、タイからの感染拡大の可能性が示唆されました。

まとめ

タイでは、2020年1月に最初の感染者が確認されて以来、急速に感染が拡大しました。政府は検査体制の強化や入国規制の強化などの対策を講じましたが、経済や社会活動に大きな影響が出ました。タイ国内だけでなく、他国への感染拡大も懸念され、国際的な協力体制の必要性が改めて認識されました。

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