タイの国旗

タイ王国を象徴する国旗は、赤、白、紺の3色が水平に5本の帯で構成されたデザインです。中央の紺色の帯は、両側の赤と白の帯の2倍の幅を持っており、この特徴的なデザインがタイの国旗を世界中で識別可能にしています。タイ語で『トン・トライロング（ธงไตรรงค์）』と呼ばれ、これは『三色旗』を意味します。

この三色の帯は、それぞれ重要な意味を持っています。赤は国家、白は宗教、紺は国王を表しています。これらの色は、公式には明文化されていませんが、タイ国民の間では広く共有されている理解であり、国家、宗教、王室の調和を象徴する非公式のスローガンとして受け止められています。

現在の国旗のデザインが制定されたのは1917年です。しかし、タイの国旗の歴史はそれ以前から長く、幾多の変遷を経て現在のデザインに落ち着いた経緯があります。

最も古い国旗は、17世紀、ナーラーイ大王の時代から赤一色の無地の旗が使われていたと伝えられています。その後、19世紀に入ると、赤地に白いチャクラ（仏教の輪）とその内側に白象が描かれたデザインが登場しました。白象は、タイ王室のシンボルとして重要な意味を持っていました。

1855年には、モンクット王（ラーマ4世）の治世下で、白象を描いた国旗が正式な国旗として制定されました。無地の旗では国際的な識別が困難であるという理由からでした。白象は王室の象徴として、そしてタイのアイデンティティを明確に示す重要な要素でした。

その後、1916年には、現在の国旗に非常に近いデザインが採用されました。しかし、この時点では中央の帯の色も赤でした。ワチラーウット王（ラーマ6世）が洪水の際に国旗が逆さまになっているのを見て、上下が逆さまになっても区別できるように対称的なデザインに変更したという逸話も残っています。

そして、1917年、現在の国旗のデザインが正式に制定されました。この際に、中央の帯の色が紺色に変更されました。この紺色は、ラーマ6世の誕生日である金曜日にちなんで選ばれたという説があります。このように、タイの国旗のデザインには、歴史、文化、王室、そして偶然の出来事までもが複雑に絡み合い、現在の姿に落ち着いています。

軍隊用陸上旗と海上旗は、共に1917年に制定され、現在に至るまで使用されています。現在の国旗は、タイ国民のアイデンティティと誇りを象徴する重要なシンボルであり、世界中でその存在感を示しています。

もう一度検索