ラーマ6世

ラーマ6世：シャムの近代化を推進した改革君主

ラーマ6世（1881年1月1日 - 1925年11月25日）は、チャクリー王朝の第6代シャム国王であり、本名をワチラーウットといいました。彼はラーマ5世の後を継ぎ、シャムの近代化に大きく貢献した人物として知られています。

海外留学と即位

ラーマ6世は、タイの国王として初めて海外留学を経験しました。イギリスのオックスフォード大学で教育を受け、帰国後は陸軍大将を務めました。1910年に即位すると、ラーマ5世が進めていたチャクリー改革をさらに推し進め、以下のような重要な改革を実施しました。

主な改革内容

義務教育制度の導入: 教育の普及に力を入れ、国民の教育水準向上を目指しました。
インフラ整備: 発電所、水道施設、ドーンムアン空港、プット大橋などの建設を行い、社会基盤の整備に貢献しました。
国旗の変更: ラーマ2世が制定した白象旗を廃止し、現在の三色旗を新たに採用しました。
姓氏法の制定: 国民に姓を持たせることで、戸籍制度の確立と社会秩序の明確化を図りました。
仏暦の採用: 仏暦を正式に採用し、国の暦を統一しました。
ボーイスカウトの導入: 世界で3番目にボーイスカウトを導入し、青少年の育成にも力を注ぎました。
公衆衛生の向上: タイ赤十字社を設立し、公衆衛生のレベル向上に貢献しました。
タイ語の語彙拡充: 近代化によって不足したタイ語の語彙を補うため、新しい単語を創造しました。
文学活動: 200以上の文学作品を執筆し、英語やフランス語の翻訳も行いました。劇作台本を自ら書き、民衆の前で演じるなど、文化的な活動も積極的に行いました。
多妻制の廃止: 西洋の習慣に倣い、多妻制を廃止しました。

華人政策の転換

ラーマ6世は、華人優遇政策を転換させました。ラーマ5世の時代まで、王室は華人姓を自称し、華人を優遇する政策を採っていましたが、ラーマ6世は華人の人頭税値上げに反対するゼネストを目の当たりにし、華人批判を行う論文を著しました。一方で、華人のタイ社会への同化を促進する政策も同時に行いました。

第一次世界大戦への参加

ラーマ6世は、第一次世界大戦に参戦し、国際連盟にも加入しました。また、英仏へ多くの留学生を派遣するなど、国際社会との連携も重視しました。

財政問題と後継者問題

ラーマ6世は、注目に値する多くの政策を打ち出しましたが、一方で財政管理には甘さがありました。特に、ボーイスカウト関連の組織であるスアパーの運営が財政を圧迫し、正規軍の反感を買うなど、混乱を招きました。ラーマ6世の財政の失敗は、次代のラーマ7世の時代に国家財政が破綻寸前に陥り、立憲革命につながる要因の一つとなりました。また、後継者問題にも関心が薄く、晩年になってようやく王位継承に関する王室典範を制定しましたが、崩御の2日前に生まれた子供は王女であり、後継者問題を先送りにしたまま、その生涯を閉じました。

まとめ

ラーマ6世は、教育、インフラ、文化など多岐にわたる分野でシャムの近代化を推進した改革君主であり、文学者としても優れた才能を発揮しました。彼の業績は、現代のタイの基礎を築く上で重要な役割を果たしました。しかし、財政管理の甘さや後継者問題への対応の遅れは、後の時代に課題を残すことにもなりました。

もう一度検索