タイミンタチバナ

タイミンタチバナ (Myrsine seguinii H.Lév.)

基本情報

タイミンタチバナはヤブコウジ科に属する常緑の低木であり、最終的には高さ10メートルに達することもある。日本本州南部から四国、九州、琉球列島にかけて生息し、特に海岸林では重要な役割を果たしています。果実の実用的価値はあまり高くありませんが、これらの地域の生態系において欠かせない存在です。

形態的特徴

この植物の若い枝は無毛で、暗い紫色を帯びています。葉は革質で、形は倒卵形や線状の長楕円形をしており、先端は丸みを帯びています。葉の基部は滑らかに狭まります。葉柄は短く、長さは2〜13mm程度です。葉身は光沢があり、表面は深い緑色です。

葉の大きさはおおよそ5〜12cmで、時には19cmに達することもあります。幅は1〜2.5cmですが、4cmに達するものも見られます。葉の縁は滑らかで、鋸歯はありません。

繁殖

タイミンタチバナは雌雄異株であり、花は春の3月から4月にかけて咲きます。花は前年に出た葉の基部から群生する形で3〜10個が集まっています。花柄の長さは2〜4mmです。花冠の色は白で、外側には赤みを帯びています。雄花は雌しべの柱頭が退化していますが、雌花では丸い雌しべが見られ、雄しべの柄はほとんど無い状況です。果実は球形で、直径は5〜7mm程度で、黒く熟します。

この種と同じヤブコウジ科の植物には、マンリョウやヤブコウジがあり、これら種は比較的わかりやすい柄を持ちますが、タイミンタチバナの果実は非常に短い柄で木に直接見えるように実ります。果実の生育様式は独特で、果実が一面に実る様子が特徴的です。

分布

本種は日本の千葉県以西、四国、九州、さらには琉球列島まで見ることができます。国外では中国大陸や台湾、ベトナム、ビルマと広がります。特に本州南岸域では、スダジイなどの森林に普通に見られ、愛知県以西の海岸のスダジイ-タイミンタチバナ群集は、この種の存在を示しています。

生態

タイミンタチバナは常緑広葉樹林の中で育ち、林床の環境に応じて樹型が異なります。栄養が不足しているため、縦に細長い樹型になることが多いです。

日本の海岸林においても、スダジイやウバメガシといった他の植物と共存しており、これらと共に特有な生態系を形成しています。沖縄本島では若干異なる生育環境があり、より標高の高い場所に分布する傾向があります。

分類

現在、タイミンタチバナはツルマンリョウ属とされることが一般的ですが、タイミンタチバナ属としての認識も存在します。シノニムにR. nerifoliaやArthruphyllum nerifoliumがあります。日本では小笠原に固有種が存在し、他にはマンリョウやイズセンリョウなどがあります。

利用

利用方法はあまり多くはなく、樹皮からはラパノンを抽出し、家畜の駆虫剤として使われることがありました。果実は時には食用として利用されることもあり、特に救荒食の一環として重用されていました。材は硬いものの、反りやすい特性があるため、薪炭材としての利用価値が高いです。

参考文献

• - 北村四郎・村田源『原色日本植物図鑑 木本編I』 (1971)
• - 佐竹義輔・原寛・亘理俊次・冨成忠夫『日本の野生植物 木本編II』 (1999)
• - 牧野富太郎『牧野 新日本植物図鑑』 (1961)

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