タイムフォーム

タイムフォーム社とタイムフォーム・レーティング：競馬界を牽引する指標

1948年、イギリスで創業されたタイムフォーム(Timeform Publications)社は、競馬情報を提供する出版社として世界的に知られています。ウェスト・ヨークシャー州ハリファクスに本社を置く同社は、競走馬の能力を数値化する指標「タイムフォーム・レーティング」で、競馬界に多大な影響を与えています。本稿では、タイムフォーム社の歴史と、そのレーティングシステムについて詳しく解説します。

フィル・ブル：タイムフォームの父

タイムフォーム社の創設者であり、タイムフォーム・レーティングの考案者であるフィル・ブル(1910-1989)は、ウェスト・ヨークシャー州ヘムズワースの生まれ。数学の学位を持つ彼は、教職に就いた後、競馬にのめり込み、数学的知識を活かした独自の予想方法を確立しました。学生時代から競馬に熱中し、競走馬の走破時計に基づいた独自の評価指標を開発、それを元に馬券を購入していました。

「Temple Time Test」というペンネームで予想を販売するようになったブルは、独自の指標の精度によってイギリス中の競馬場で評判を呼びました。1943年から1974年までの馬券購入での損益は、資料によって異なりますが、多額の利益を得ていたと伝えられています。ブルは出版活動だけでなく、競走馬の所有や生産にも携わり、日本で種牡馬となったロムルスなど、多くの活躍馬を送り出しました。また、1961年には現在のフューチュリティトロフィーであるタイムフォーム・ゴールドカップを創設するなど、イギリス競馬の発展にも大きく貢献しました。彼の有名な格言「競馬場では、自分の目を信じ、他人の話に惑わされるな」は、今日でも競馬関係者の間で語り継がれています。

タイムフォーム社の設立と発展

ブルは、同じく独自の競走馬指標を開発していたディック・ウィトフォードと共に、1948年にポートウェイ出版株式会社を設立。最初の出版物『Racehorses of 1948』で、タイムフォーム・レーティングを発表しました。これは、現在も続く『Racehorses of …』シリーズの第一弾です。その後、タイムフォーム社は日刊の出馬表の刊行で有名になり、現在もその事業を継続しています。

タイムフォーム・レーティングは、当初は民間企業が作成した非公式な指標でしたが、その精度の高さから高い信頼性を獲得。イギリス・アイルランドのみならず、世界中の競馬場で使用されるようになり、競走馬の能力評価における標準的な指標となりました。2006年には、大手インターネットブックメーカーのベットフェアー社に買収されましたが、現在も競馬界に不可欠な存在として活躍し続けています。

タイムフォーム社の主な出版物

タイムフォーム社は、『Racehorses of …』シリーズ以外にも、多くの競馬関連書籍を出版しています。『Chasers and Hurdlers』は、イギリスの障害競走に出走した全馬を収録した書籍であり、『Horses to Follow: Flat Season』は、翌年のクラシック有力馬を予想・解説したものです。また、アメリカのデイリー・レーシング・フォーム(DRF)と協力し、イギリス、アイルランド、フランス、UAEの競馬に関する基礎情報を提供するなど、情報提供事業を多角的に展開しています。

タイムフォーム・レーティング：その仕組みと活用

タイムフォーム・レーティングは、競走馬の能力を数値化した指標です。過去の成績やレース中の着差、負担重量、馬齢、コース、天候などの様々な要素を考慮して算出され、競馬予想や競走馬の客観的な評価に用いられています。

レーティングは、基本的なレーティングに、負担重量に応じた修正値（TWFA：Timeform Weight For Age）を加味して算出されます。TWFAは、馬齢、時期、距離に応じて設定される負担重量の基準値であり、これより重い重量の場合はマイナス、軽い場合はプラスの修正が行われます。例えば、負担重量が重い馬はレーティングが低くなり、軽い馬は高くなります。

また、着差を重量に変換することで、異なる距離のレースでも競走馬の能力を比較することができます。例えば、5ハロンのレースでは1馬身を3ポンド、8ハロンのレースでは1馬身を2ポンドとして換算します。

レーティングは、最低ランクで20台、最高ランクで130を超える値が与えられ、馬齢を問わず比較することができる点が大きな特徴です。140以上のレーティングは傑出した競走馬を示し、130-135は平均的なG1優勝馬を超えるレベルと評価されます。

さらに、レーティングには、p（高い能力の見込み）、+（数値より高い能力）、d（能力低下）、§（気性的な問題）などの記号が付与される場合もあります。

タイムフォーム・レーティングと他の指標

タイムフォーム・レーティングは、アメリカで使用されるスピード指数、イギリスのレーシングポスト・レーティングス、ドイツのゲネラルアウスグライヒ、日本の合同フリーハンデなど、他の競走馬評価指標と比較されることがあります。これらの指標は、それぞれ異なる計算方法や考慮する要素を持っており、レーティングの数値も異なります。

まとめ

タイムフォーム社とタイムフォーム・レーティングは、長年にわたり競馬界に貢献してきました。その精度の高いレーティングシステムは、競馬予想や競走馬の評価に広く利用され、競馬の発展に重要な役割を果たしています。今後も、タイムフォーム社は競馬界をリードする存在として、様々な情報を提供し続けるでしょう。

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