タイワンアシカキ

タイワンアシカキ（Leersia hexandra Sw.）

タイワンアシカキとは、イネ科に属する植物であり、主に南西諸島や熱帯地域の湿地帯や水辺に自生しています。この植物は、水際や水面に広がる特性を持ち、そのため湿潤な環境でよく見かけることができます。

特徴

タイワンアシカキは多年生の草本で、細長い茎が斜めまたは垂直に伸び、高さ30～100cmに達します。茎は匍匐（ほふく）する枝を多く伸ばし、節から根が生え出すことがあります。また、茎の節には微細な毛が密生しています。葉は線状披針形で、長さは5～20cm、幅は3～10mm程度で、先端は鋭く尖っています。葉の表面はざらつきがあり、その外観がこの植物の大きな特徴の一つです。

花序は茎の先端から伸びており、円錐花序の形は卵円形から長楕円形で、長さは5～12cmです。花序の枝は細く、上向きまたは横に伸び、多数の小穂が花軸の片側にのみ配置されます。小穂は淡緑色で、長さ3～3.5mmと長楕円形を呈し、触れるとざらつきが感じられることがあります。タイワンアシカキにおける小穂は、イネ属に似ていますが、包頴が消失し護頴と内頴から成り立っています。観察する上で護頴や内頴の両端には毛が見受けられます。

日本名の「アシカキ」は、同属の日本本土に生息する植物に基づいて名付けられたもので、土の中で生える際に人がざらざらと足を掻く様子からその名が由来しています。タイワンアシカキも、植物の表面がざらつくため、同様の由来を持っています。

分布と生育環境

日本では主に南西諸島に自生しており、国外では東南アジア、インド、アフリカ、オーストラリアおよびアメリカに分布しています。特に、タイでは水面から標高1800mに至るまで広く生育しており、水溜まりや水路、湖沼の縁で育つことが多いです。これらの地では砂質や泥質の開けた場所だけでなく、木陰にも分布しており、このため水田の雑草としても見かけることがあります。

近縁種・類似種

サヤヌカグサ属には、世界中の熱帯から温帯にかけて18種が確認されており、日本には本種を含む4種が存在します。最も似ている種はアシカキ（L. japonica）であり、全体的な形状は似ていますが、花序の枝が太く、小穂もわずかに大きいことが特徴です。また、エゾノサヤヌカグサ（L. oryzoides）やサヤヌカグサ（L. sayanuka）とも形状が似ていますが、これらは花序の枝の先端にのみ小穂をつけ、枝の先端で垂れる性質が見られます。

利用

タイワンアシカキは、タイにおいて家畜の飼料として利用されています。近年では、この種がクロムを蓄積することが確認されており、重金属汚染の除去に関しての利用が期待されています。

保護状況

環境省のレッドデータブックでは、タイワンアシカキは準絶滅危惧種に指定されています。特に県別に見ると、鹿児島県では絶滅危惧I類に分類されている一方、沖縄県では普通種とされていることが多いです。

出典

• - 大橋広好他編、『改訂新版 日本の野生植物 2 イネ科～イラクサ科』、(2016)、平凡社
• - 初島住彦、『琉球植物誌』追加・訂正版、(1975)、沖縄生物教育研究会
• - Traiperm Paweena et al. 2015. 「A taxonomic revision of the tribe Oryzeae (Poaceae) in Thailand」ScienceAsia 41: p.363-376.
• - Liu Jue et al. 2011. 「Potential of Leersia hexandra Swartz for phytoextraction of Cr from soil」Journal of Hazardous Materials 188 :p.85-91.

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