タイ国家映画映像委員会

タイ国家映画映像委員会

タイ国家映画映像委員会（Thailand's National Film Board）は、タイ国内で上映、頒布される映画や映像の検閲、審査を行う国家委員会です。日本語では「国家映画ビデオ委員会」とも呼ばれます。

概要

委員会は、タイにおける映画産業の育成と検閲に関する審議を主な目的としています。具体的には、映画産業推進方針や計画の立案、映画産業の育成、文化芸術分野における知識や価値観の推奨、映画に関する法整備の方針策定などを行います。また、映画館でのタイ映画と外国映画のバランスを考慮した上映規定なども審議対象です。

一方で、海外メディアに対しては、タイ国内での撮影活動を監視する役割も担っています。委員会からの許可を得ずにタイ国内で商用目的の映像撮影を行うことは違法行為とみなされます。そのため、タイ国内で撮影・制作を行う海外の映像制作業者は、必ず委員会を通して撮影許可を得る必要があります。

しかし、この構造が、タイ国内で営業する映像制作コーディネート業者との癒着を招いているという指摘もあります。実質的には、コーディネート業者への利益誘導を目的としているとの批判もあり、委員会の公式ウェブサイトには、コーディネイト業者との契約を執拗に勧誘する内容が散見されます。実際の対応もそれに近いものであり、国外の映像制作業者やメディアの間では委員会に対する評判は高くありません。

構成

委員会の構成は以下の通りです。

委員長：首相
副委員長：文化省大臣および観光・スポーツ省大臣
委員：首相府次官、財務省次官、外務省次官、観光・スポーツ省次官、社会開発・人間安全保障省次官、商務省次官、教育省次官、タイ国家警察庁本部長、首相府消費者保護委員会事務局長、工業省タイ投資委員会事務局長、内務省代表、情報技術・通信省代表、有識者から首相が命じる11名を超えない委員。
事務局：文化省文化振興局映画検閲部が委員会に関する事務、研究、会議運営などを行います。さらに観光・スポーツ省観光局フィルム事務局がタイ国内における外国人クルーによる映画撮影許可作業を行っており、ワンストップオフィスを設けています。外国人の映画撮影には申請と監視官雇用の義務があります。

審査

委員会は映画映像審査委員会を設置することができます。構成員は以下の4つのカテゴリーから選出されます。

委員会の指名に基づき大臣が承認した個人（9名を超えないこと）
映画制作企業と関連のない専門家（外国、映画、芸術、マスコミ、環境関連、7名を超えないこと）
映画･映像、テレビ局、芸術、消費者保護に関する政府によって承認された専門家4名
市民3名

映画映像審査委員会は以下の権能を持ちます。

国内における外国映画撮影許可
国内における外国映画の上映許可
国内における映画・映像の上映、頒布、レンタル、取引に関わる検閲および規制
国内における映画・映像の上映、頒布、レンタル、取引の許可
国内における情報通信、公共放送の許可
国内における映画・映像の送信許可

規定法規

仏暦2551年（2008年）タイ国家映画映像法 （พระราชบัญญัติภาพยนตร์และวีดิทัศน์ พ.ศ. ๒๕๕๑）

映画検閲問題

過去には、委員会による映画の検閲が問題視された事例もあります。2007年には児童買春、人身取引を扱った「闇の子供たち」が撮影不許可処分を受け、2010年にはトランスジェンダーを扱った『Insects in the Backyard』が上映禁止処分を受けました。

脚注

観光・スポーツ省観光局フィルムオフィス

関連項目

文化省文化振興局 (タイ)
デジタル経済社会省
闇の子供たち

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