タイ王国の便所

タイ王国の便所事情

タイ王国における便所の歴史、種類、公衆衛生、文化について解説します。

歴史

スコータイ時代・アユタヤ時代

スコータイ時代には、すでに排便処理の方法が確立されており、「スコータイ式便器」と呼ばれる石製の便器が存在しました。これは尿と便を分けて回収する構造で、臭気対策が施されていました。王族や豪族は住居内に便所を設けるようになり、平民との間で区別がされていました。王族の排泄物は特別な容器に回収され、専用の場所で廃棄されました。

ラッタナコーシン時代

ラーマ1世の時代には、王宮内に便所が設置されるようになりました。ラーマ2世の時代には、木製の便所に便壺を設置し、従者が定期的に廃棄する方式が採用されました。西洋文化の影響を受け、ラーマ5世の時代にはヨーロッパ式の水洗便所が導入されました。

便所の種類

穴式便所

タイで最も初期に使用された便所で、地面に穴を掘り、その上に建物を建てた簡素な構造です。穴が一杯になると埋め戻し、新しい穴を掘りました。

便壺式便所

穴式便所と同様の構造ですが、穴の中に便を受ける壺が備えられています。壺は毎日回収され、清掃会社が処理を行いました。

ブンサアート式便所

アユタヤ県の公衆衛生局調査官によって発明された便所で、蓋の閉め忘れを防ぐための工夫が凝らされています。扉と連動した舌状の仕掛けにより、使用者が蓋を閉めないと扉が開かない仕組みになっています。

コーハーン式便所

排泄物を下方の槽に落とす構造で、排泄物を落とす円管が婉曲しており、水で栓をする構造になっています。これにより、悪臭や害虫の侵入を防ぐことができます。下部の槽は浸透槽となっており、排泄物は地面に浸透していきます。

水洗式便所

タイでは、ハイタンク式の水洗便所が1917年から1947年ごろに普及し始めました。当初は、宮殿や富裕層の家庭で使用されていましたが、第二次世界大戦後、一般家庭にも普及していきました。現代の水洗式便所は、節水技術や自動洗浄機能など、様々な機能が搭載されています。

公衆便所

タイ政府は公衆衛生の観点から、公衆便所の整備を推進してきました。公衆便所はタイ保健局が管轄しており、定期的な調査や基準値の測定を行っています。

公衆便所に関する基準

公衆便所には、衛生項目、アクセシビリティ項目、安全項目の基準が設けられています。しかし、基準を満たしている公衆便所はまだ少なく、改善の余地があります。特に、身体障がい者への配慮が不足しており、バリアフリー化が求められています。

支援と普及啓蒙

タイ保健省は、公衆便所の普及開発のための基本計画を策定し、HAS（衛生、アクセシビリティ、安全）の評価基準を設けています。また、世界トイレ会議の開催や、公衆便所監視計画など、様々な普及啓蒙活動を行っています。

便所と法

タイ王国では、便所に関する多くの規則が取り決められています。1897年に制定されたバンコク都公衆衛生法令は、タイで最初の公衆衛生に関する法令であり、便所や排便処理に関する規制を定めています。また、建築物管理法や、身体障がい者向けのバリアフリーに関する省令なども存在します。

便所の文化

タイ人の便所の利用方法

タイ人は伝統的にしゃがみこんで用を足す習慣があります。しかし、近年では西洋化が進み、便座式の水洗便所が増加しています。公衆便所での空室の待ち方にも、地域によって違いがあります。

便所に関わるタイの慣用句

タイの慣用句の中には、便所に関するものがあり、隠喩的な意味合いを含んでいます。例えば、「便所七つ分の糞である」という慣用句は、「この上もなく嫌だ」という意味を表します。

文学の中の便所

タイの文学作品の中にも、便所が登場する場面があります。例えば、『クンチャーン・クンペーン物語』では、クンペーンが住居の中に便所を建設したことが、謀反の罪を着せられる理由の一つとして挙げられています。

まとめ

タイ王国における便所は、歴史、文化、公衆衛生など、様々な側面から重要な存在です。政府や関係機関による取り組みにより、公衆便所の改善が進められていますが、更なる普及と啓蒙活動が求められています。

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