タウソン (メリーランド州)

タウソン

メリーランド州中央部に位置するタウソンは、ボルチモア郡の行政の中心地であり、国勢調査指定地域（CDP）として定義されています。広大なボルチモア都市圏の郊外にあり、2020年の国勢調査では約6万人の人口を擁しています。多様な歴史、充実した教育機関、そして活発な商業活動がこの地域の特色です。

歴史

タウソンを含む地域は、1600年代にはサスケハノック族インディアンの狩猟地でした。主要な集落はサスケハナ川沿いにありましたが、この一帯も彼らのテリトリーに含まれていました。

入植は1752年、ペンシルベニア州から移住したウィリアムとトマスのタウソン兄弟がセイターの丘で農業を始めたことに始まります。ウィリアムの息子、エゼキエルはタウソン・ホテルを開業し、ボルチモアの港へ農産物や家畜を運ぶ農夫たちの往来増加に対応しました。ホテルは現在の主要交差点近くにあり、この村は「タウソンタウン」と呼ばれるようになりました。

1790年には、チャールズ・リッジリー大尉がタウソンタウンの北に広壮なハンプトン邸宅を完成させました。これは当時のアメリカ最大の個人宅の一つであり、リッジリー家は1948年まで6代にわたりこの地に暮らしました。現在はハンプトン国立史跡として保存・公開されています。

1850年代に入ると、ボルチモア市と郡の司法権分離が進みました。1851年の州憲法改正とそれに続く交渉、選挙、住民投票を経て、1854年2月13日にタウソンがボルチモア郡の新しい郡庁所在地として選ばれました。最初の郡庁舎は1855年に完成し、地元の建材（石灰石と大理石）と土地所有者の寄付により建てられました。この建物は現在も使用されており、増築を重ねながら郡行政の中心であり続けています。郡監獄も同時期に建設されましたが、1980年代には町の北に移転・近代化されています。

南北戦争中の1860年代には、タウソンで小規模な衝突が二度発生しました。タウソンの住民には南軍支持者が多く、ホテルなどには南軍旗が掲げられることもありました。1861年の北軍による占領に続き、1864年7月には南軍の騎兵隊がタウソンを含む周辺地域を襲撃しました。このギルモア隊による襲撃では、ボルチモアから派遣された北軍部隊との戦闘が発生し、南軍が数的劣勢を覆して勝利しました。戦後、この襲撃を率いたハリー・W・ギルモア少佐はボルチモア市警察の要職を務めています。

1878年には大火が発生し、町の中心部に大きな被害をもたらしました。世紀末には水道と電力の供給が始まり、町のインフラが整備されました。

20世紀初頭、タウソンはまだ田園地帯の様相を呈していました。しかし、1910年代にはメリーランド州立師範学校（現在のタウソン大学）がタウソンに移転し、町の発展に大きく貢献しました。キャンパスは1915年に開校し、その後規模を拡大し、名称も変更を重ねて現在のタウソン大学となりました。

第二次世界大戦後、ボルチモア市の郊外化が進むにつれて、タウソン中心部でも商業施設やオフィスビルなどの開発が顕著になりました。1980年代から90年代にかけては、歴史的な建物が解体され、近現代的な都市景観へと変貌を遂げました。

宗教施設も古くから存在し、1839年にエプソム礼拝堂が最初のキリスト教礼拝所となりました。人口増加に伴い、多くの宗派の教会が設立されました。ガウチャー大学の敷地売却に伴い移転・改称した教会もあります。また、歴史的なアフリカ系アメリカ人コミュニティも形成されており、その歴史は著作家ロバート・コストンによって記録されています。

地理と気候

タウソンは北緯39度23分35秒、西経76度36分34秒に位置し、ボルチモア市のすぐ北に隣接しています。総面積は約37平方キロメートルで、そのほとんどが陸地です。高速道路I-695（ボルチモア・ベルトウェイ）の内側、I-83号線の東に位置し、ヨーク道路が主要な交通軸となっています。西にはパイクスビル、北にはルーサービルやハンプトン、東にはパークビルが接しており、南側はボルチモア市に面しています。

アンスリー、ロジャーズフォージ、ストーンリー、イーストタウソン、ウェストタウソンなど、多くの個性的な地区で構成されています。ラクストンやユードウッドといった地域もタウソンの一部とみなされることがあります。

気候は温暖湿潤気候（Cfa）に分類され、夏は高温多湿、冬は比較的温暖または冷涼な気候が特徴です。

政府機関と人口

メリーランド州公衆安全矯正サービス省の本部がタウソンに置かれています。人口動態については、2000年の国勢調査で詳細なデータが記録されています（ここでは省略します）。

交通

タウソンは複数の主要道路が交わる交通の要衝です。また、メリーランド州交通管理局（MTA）による路線バスが運行されており、ボルチモア中心部や周辺地域を結んでいます。特にヨーク道路を走る系統は利用者が多いです。ボルチモア・ライトレールも近隣に停車駅があり、ボルチモア中心部やボルチモア・ワシントン国際空港へのアクセスを提供しています。タウソン大学やガウチャー大学も独自のシャトルバスサービスを学生向けに提供しています。

かつて、タウソンは「マ と パ」鉄道として親しまれたメリーランド・アンド・ペンシルベニア鉄道の沿線でした。この鉄道は1882年に建設が始まり、ボルチモアとペンシルベニア州ヨークを結んでいましたが、旅客輸送は1954年、鉄道自体も1958年に廃止されました。線路が通っていた場所に残る橋台が、鉄道の歴史を静かに物語っています。

近年では、2014年にタウソン・バイク・ベルトウェイが開通し、中心部の主要道路に自転車レーンが整備されるなど、自転車での移動環境の改善も進められています。

ショッピングと見どころ

タウソンはボルチモア郡内で最大の商業地域の一つです。主要なショッピング施設としては、ボルチモア郡最大の屋内型モールであるタウソン・タウンセンター、比較的新しい屋外型モールであるタウソン・スクエア（2014年開業）、小規模な屋内型モールであるショップス・アット・ケニルワースなどがあります。また、広大な敷地を持つタウソン・プレースには、大型量販店から専門店、レストランまで多様な店舗が集積しており、地域の商業活動の中心を担っています。

歴史的な見どころとしては、前述のハンプトン国立史跡があります。18世紀の壮麗な邸宅とその庭園、そして当時の奴隷住居などが保存されており、一般に公開され、ガイドツアーも提供されています。

タウソン大学構内にあるタウソン・センターやユニタス・スタジアムは、大学の運動競技チームの試合会場であると同時に、地域イベントにも利用されています。特にSECUアリーナは、バスケットボールなどの屋内競技の拠点となっています。

教育

タウソンには、二つの主要な高等教育機関があります。タウソン大学はメリーランド州大学システムにおいて2番目に大きい公立大学で、多様な学部を持ち、特にビジネススクールは州内最大規模です。町の中心部から少し北には、リベラル・アーツ教育に重点を置く私立のガウチャー大学があります。ガウチャー大学は1885年にボルチモア女子カレッジとして創立されました。

公教育はボルチモア郡公共教育学区が管轄しており、その本部もタウソンに置かれています。タウソン高校は郡内最初の公立中等教育学校であり、最大規模の高校の一つです。他にも、ロックヘイブン高校や、芸術・技術分野のマグネットスクールであるカーバー芸術技術センターがあります。小学校は町内に6校あり、クロムウェルバレー地域マグネットスクールのように郡全域から生徒を受け入れる学校もあります。また、発達障害など特別な支援を必要とする児童・生徒のための特殊教育学校であるリッジ・ラクストン学校もタウソンにあります。

古くから評価の高い私立学校も多数存在します。特に中等教育レベルでは、カルバート・ホール・カレッジ高校、ロヨラ・ブリクフィールド、コンコーディア準備学校、ノートルダム準備学校などが知られています。

医療施設

地域住民の医療を支える主要な施設として、グレーター・ボルチモア医療センター、メリーランド大学セントジョセフ医療センター、シェパード・プラット病院があります。

著名な出身者

タウソンからは、各界で活躍した著名人が輩出されています。第39代アメリカ合衆国副大統領を務めたスピロ・アグニュー、ユニークな俳優・歌手として知られるディヴァイン、アメリカ文学を代表する作家F・スコット・フィッツジェラルド、往年のハリウッド女優ドロシー・ラムーアなどが名を連ねます。現代では、フィギュアスケート世界チャンピオンのキミー・マイズナーや、史上最高の競泳選手の一人であるマイケル・フェルプス、そして人気バンドオール・タイム・ロウのメンバーなどがタウソン出身です。

大衆文化の中でのタウソン

タウソンはいくつかの作品の舞台や登場人物の出身地としても描かれています。NBCの人気シットコム『となりのサインフェルド』では、登場人物の一人であるエレイン・ベネスの出身地とされています。また、トム・クランシーの小説やそれを基にしたゲームシリーズ『スプリンターセル』では、CIA分析官ジャック・ライアンや主人公サム・フィッシャーがタウソンにゆかりのある設定となっています。

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