タウトンの戦い

タウトンの戦い：薔薇戦争、血と雪に染まった一日

タウトンの戦いは、1461年3月29日にヨークシャーのタウトン村近郊で行われた、薔薇戦争における重要な戦いです。この戦いは、イングランド史上最も血なまぐさい戦いの一つとして知られ、推定で2万人以上、恐らく3万人もの死傷者を出しました。

戦いの背景

戦場となったのは、タウトン村とサクストン村の間の高原地帯で、ヨークの南西約19kmに位置します。この戦いが大規模な死傷者を出すに至った背景には、当時の国内情勢が深く関わっています。

ランカスター派は、ウェイクフィールドの戦いでヨーク公リチャードとソールズベリー伯を討ち、第2次セント・オールバーンズの戦いでも勝利を収め、ヨーク派と互角の立場にありました。しかし、「キングメーカー」ウォリック伯がロンドンを掌握し、ヨーク公の長男をエドワード4世として擁立。エドワード4世は、ランカスター派との決戦に臨むべく北進を開始しました。

ヘンリー6世は、信心深く平和主義者であり、精神的に不安定だったため、軍議には参加しませんでした。しかし、王妃マーガレット・オブ・アンジューが彼の代わりに軍を指揮し、サマセット公ヘンリー・ボーフォート率いる戦闘部隊を自由に使うことを認めました。

この戦いには、貴族の約半数にあたる28名の貴族を含む、5万人から10万人の兵士が参加したと推定されています。ランカスター派は約42,000人、ヨーク派は約36,000人の兵力を有していました。戦いは極めて熾烈を極め、両軍の兵士が押し合いへし合いする状況が続きました。

戦闘の過程

両軍はそれぞれ3つの部隊に分かれ、猛吹雪の中、4時間もの間膠着状態が続きました。やがて風向きが変わり、ランカスター派の兵士の顔に雪が吹き付けるようになると、ヨーク派のフォーコンバーグ卿が主導権を握ります。彼は弓兵を前面に配置し、ランカスター派の隊列に大量の矢を射掛けました。視界が悪く、向かい風という悪条件の中、ランカスター派の弓矢はヨーク派に届きませんでした。

損害が増大したランカスター軍は、弓の射程距離外まで敵を引き込むしか生き残る道はないと判断し、接近戦を試みます。ランカスター派の動きに対応し、フォーコンバーグは矢を撃ち尽くした弓兵に、接近してくるランカスター派を牽制するための人員を残し、落ちている矢を回収するように命じました。

ランカスター派は兵数の優位性を活かし、ヨーク派を押し返します。しかし、ウォリック伯とエドワード自身も最前線で兵士を鼓舞し、戦況は一進一退を繰り返しました。ヨーク派は徐々に押し込まれ、城の近くまで後退します。その時、200名のランカスター派槍兵がヨーク派の左翼に奇襲を仕掛け、ヨーク派の戦線は崩壊寸前となりましたが、エドワードは予備兵力を投入し、戦線の崩壊を防ぎました。

午後になると、ノーフォーク公ジョン・モウブレーが数千の兵を率いてヨーク派に加勢し、戦況は再び均衡を取り戻しました。しかし、突然ランカスター派の戦線が崩壊し、多くの兵士が戦場から逃走を始めました。

潰走と悲劇

潰走の際に発生した死傷者数は、戦闘中のそれを遥かに上回ったと言われています。隣接する川にかかる橋が兵士の重さに耐えきれず崩落し、多くの兵士が冷たい川に落ちて溺死しました。また、逃げる兵士は追撃を受け、次々と殺害されました。

特に悲惨な惨劇が起きたのは、「血まみれの牧草地（Bloody Meadow）」と呼ばれる場所でした。川に落ちた兵士の死体を踏み越えて逃げようとした兵士たちが、追撃者に追い詰められ、虐殺されたのです。タウトンからタッドキャスターまでの道は、死体で埋め尽くされました。

逃げる兵士たちは、身を軽くするために武器や鎧を捨てましたが、それが追撃者にとって格好の獲物となり、さらに多くの兵士が殺されました。タッドキャスターでは、一部の兵士が抵抗を試みましたが、最終的には全滅しました。

潰走は翌朝まで続き、ヨークに辿り着いた兵士たちは完全に混乱状態に陥っていました。ヘンリー6世、王妃マーガレット、そしてサマセット公は、スコットランドへと逃亡しました。殺害を免れ、領地を没収されなかった貴族たちは、エドワード4世との和平を余儀なくされました。

参考文献

* トレヴァー・ロイル著、陶山昇平訳『薔薇戦争新史』彩流社、2014年。

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