タウヒード

タウヒード：イスラームにおける一神教の概念

タウヒード（アラビア語: توحيد）は、イスラームにおける一神教の概念であり、「一にする」という意味を持ちます。単に神は唯一であるというだけでなく、世界観、存在論、価値観の根本を意味する重要な概念です。

語源と定義

タウヒードは、アラビア語の動詞「ワッハダ（一にする）」から派生した言葉で、唯一神アッラーの存在を絶対とし、キリスト教の三位一体説を否定します。クルアーンにおいても随所に言及されており、イスラームの信仰の中心をなしています。

シルク（多元性）の否定

タウヒードの反対概念はシルク（アラビア語: شرك）であり、分割や分離を意味します。アッラー以外のものを神とすること、アッラーに匹敵するものを置くことは、イスラームにおいて最大の罪とされます。

各宗派の視点

スンナ派

スンナ派では、タウヒードはイスラームの教義（Aqidah）の重要な側面の一つと見なされます。アッラーは唯一の神であり、全ての世界を創造し、全知全能であると信じられています。また、神は不可視であり、最後の審判の日にのみ姿を見ることができるとされます。
スンナ派は、タウヒードの3つの側面を重視します。

1. 神の唯一性（Tawheed-ar-Ruboobeeyah）:神は創造者、創始者、設計者であり、全てを養い、安寧を与える唯一の神であると信じること。
2. 唯一神への帰依（Tawheed-al-Ulooheeyah）:神以外のものを崇拝の対象としないこと。
3. 偶像崇拝の完全否定（Tawheed-al-Asma-Sifaat）:神の不可視性を尊重し、神像を祀ることを否定すること。

シーア派

シーア派においても、タウヒードは絶対的なものです。神は見ることができず、アッラーはどんな形であれ体を持っているという考えも否定されます。クルアーンにアッラーの体についての記述が見られる箇所については、比喩的な解釈がなされます。

シーア派は、神の属性として、カディーム（永遠）、カディール（全能）、アリーム（全知）などを挙げます。また、シャリク（妻を持たない）、ムラカブ（作られたものではない）などの消極的な属性も重視します。

タウヒード論への批判

スンナ派とシーア派の間では、タウヒードの解釈に関して様々な批判があります。シーア派は、スンナ派が神の体の一部について記述したハディースを重視することを批判します。一方、スンナ派は、シーア派がアリーを神格化することでタウヒードを否定しているのではないかと批判します。サラフィーは、シーア派とスンナ派がアリーへの崇敬の念を唱えるタワッスルを多神教的であると主張します。

現実解釈における3つの原則

タウヒードを理解する上で重要なのは、神の唯一性を前提として、現実をどのように解釈するかという点です。タウヒードは、イスラーム世界の法理論、神学、哲学、政治学、経済学などの基礎となります。

1. 等位性: 万物は神の前に平等であり、差別は存在しません。
2. 差異性: 神が創造したものは全て異なっており、個々の重要性が尊重されます。
3. 関係性: 万物は互いに関連しあっており、孤立したものは存在しません。

これらの原則に基づき、イスラーム世界では、人間関係、男女関係、経済活動などが構築されてきました。

まとめ

タウヒードは、イスラームにおける最も重要な概念の一つであり、ムスリムの生活全体に影響を与えています。神の唯一性を信じ、シルクを否定し、現実をタウヒードの原則に基づいて解釈することが、ムスリムの信仰の核心となります。

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