タカネマンテマ

タカネマンテマ(Silene uralensis (Rupr.) Bocquet)

タカネマンテマは、ナデシコ科マンテマ属に属する多年草で、主に寒冷地や高山地域に分布しています。この植物の名前の由来にはいくつかの説があります。例えば、『牧野新日本植物図鑑』では、近縁種であるムギセンノウ属からの変化として説明されています。一方で、『植物和名語源新考』では、ハマベマンテマの種小名から由来するとされています。さらに、学名であるSileneの由来についても諸説あり、ギリシャ語の「唾液」からや、神話に登場するシレノスに由来すると考えられています。また、種小名「uralensis」は、この植物が最初に発見されたウラル地方を示しています。

特徴

タカネマンテマは、高さが10cmから20cm程度になる植物で、根茎からの株分かれにより2対から4対の小さな根葉が形成されます。茎はほとんど伸びず、先端に葉を持つ無花茎が見られます。茎葉は対生で、線形披針状をしており、長さは約6cmまで伸びることがあります。花茎は高さが20cmに達し、主に7月から8月にかけて美しい花を咲かせます。この花は釣鐘状の形をしており、直径は約12mmです。最初は下向きに花を開きますが、次第に直立する様子が観察されます。また、茎や葉、花には細かい毛が生えています。

蒴果は10mmから12mm程度で、先端が10片から12片に裂ける特徴を持っています。種子は扁平で翼を持ち、サイズは約2mmと小さく、遺伝子数は2n=24または48です。

分布

タカネマンテマはユーラシア大陸や北アメリカに広く分布していますが、日本国内では南アルプスの高山帯のごく限られた場所にのみ見られます。

保護上の位置づけ

この植物は日本国内では、環境省のレッドリストにおいて絶滅危惧IA類（CR）に指定されています。特に長野県、山梨県、静岡県においては絶滅危惧I類（CR+EN）として認識されており、その個体数は減少しています。

保護・再生の試み

タカネマンテマは localな希少種として、採取や盗掘の問題が深刻化しています。これに対抗するため、個体数の維持を目指したコンクリートな対策が施されています。具体的には、休眠打破に向けた次亜塩素酸ナトリウム水溶液処理や、株分けによる人工繁殖の試みが進められています。

このような保護活動は、タカネマンテマの将来を守るために非常に重要です。

参考文献

• - 植物の世界 朝日新聞社出版局 ISBN 9784023800106
• - 植物和名語源新考 深津 正 (著) ISBN 9784896946703
• - 原色日本高山植物図鑑・続 武田久吉 (著) ISBN 9784586300280
• - 原色新日本高山植物図鑑 (II) 清水建美 (著) ISBN 9784586300600
• - 原色牧野植物大図鑑 (合弁花・離弁花編) 牧野富太郎 (著) ISBN 9784832604001

これらの文献はタカネマンテマの理解を深めるための貴重な情報源となります。

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