タケデンバード事件

タケデンバード事件（クモハタ記念事件）詳解

1972年12月3日、東京競馬場で開催された第22回クモハタ記念は、タケデンバードとハクホオショウによる息詰まる接戦となりました。多くの観客はハクホオショウの1着、タケデンバードの2着と見ていましたが、日本中央競馬会（JRA）は決勝審判委員の肉眼判定に基づき、タケデンバードの1着、ハクホオショウの2着と発表しました。

この結果に、ハクホオショウ陣営をはじめ、多くの競馬関係者から反発の声が上がり、誤審疑惑が浮上しました。当時の着順判定は肉眼判定が基本でしたが、接戦の場合にはゴール前写真を公開する慣例がありました。しかし、このレースでは写真が撮影されておらず、JRAはカメラ故障または電源入れ忘れと説明。しかし、着順発表のミスを隠蔽するための口実ではないかという疑念も拭えませんでした。

この疑惑は、結局、公式に覆ることはありませんでした。着差は「クビ」差と記録されましたが、この判定は現在でも議論を呼び続けています。

この事件を受け、ハクホオショウ陣営とJRAの交渉の結果、写真判定による着順決定を義務付けるルール改正が行われました。これは、日本の競馬における大きな転換点となりました。

その後、タケデンバードはハマノパレードの故障により高松宮杯を勝利するも、ハクホオショウは天皇賞（秋）で骨折により競走中止という、対照的な結果となりました。

事件の背景と影響

この事件は、当時の競馬における着順判定の曖昧さと、情報公開の不足を浮き彫りにしました。肉眼判定の限界と、写真判定の重要性を改めて認識させる出来事となりました。また、この事件は、競馬のルール改正だけでなく、競馬界全体の透明性向上を促す契機となりました。

写真判定導入の意義

写真判定の導入は、競馬の公平性と信頼性を高める上で非常に重要な一歩でした。接戦での判定に客観性と透明性をもたらし、誤審の可能性を大幅に減らすことに貢献しました。

結論

タケデンバード事件は、競馬史上に残る大きな論争であり、日本の競馬の近代化に大きな影響を与えた出来事でした。この事件は、肉眼判定の限界と、客観的な判定システムの必要性を示すとともに、競馬界における透明性と公平性の重要性を再認識させる契機となりました。現在では、写真判定が標準となり、このような誤審疑惑は減少しました。しかし、この事件は、常に技術革新と公平性を追求し続ける必要性を私たちに教えてくれます。

参考文献

* 田中貴英『世紀の大誤審・クモハタ記念編 肉眼判定中心の時代』（『ザ・競馬トリビア 史上最強の珍記録・怪事件』所収、広済堂出版、2003年）

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