タケデンバード

タケデンバード：魔性の競走馬、栄光と影の物語

1972年、最強世代と呼ばれた競走馬たちがしのぎを削った時代。その中にあって、タケデンバードは特異な存在感を放つ馬でした。中央[[競馬]]の重賞レースであるクモハタ記念と高松宮杯を制覇したものの、その勝利には数々の異論がつきまといます。「魔性の馬」「死神」と揶揄されるほど、その競走生活はアクシデントに満ちていました。

1971年9月、中山[[競馬場]]でのデビュー戦は5着と平凡なスタートでした。その後も勝ち星から遠ざかり、4戦目の未勝利戦でようやく初勝利を挙げた時点では、最強世代の中でも平凡な馬と見られていたようです。しかし、運命の歯車は回り始めます。

転機となったのは、1972年7月9日に行われたみずばしょう特別でした。ダービーへの切符を掴むための重要なレースでしたが、なんと4頭もの落馬事故が発生する波乱の展開となりました。その中でタケデンバードは、不利を全く受けずに圧勝。このレースでの鮮やかな勝利が、タケデンバードを一躍注目馬へと押し上げました。

続くダービーでは11着と結果を残せませんでしたが、10月22日の条件戦を制しオープン入りを果たします。しかし、カブトヤマ記念では、当時最強馬と謳われたハクホオショウに完敗。その後迎えたクモハタ記念では、新たな局面が訪れます。

クモハタ記念は、まずスタートから波乱の様相を呈しました。有力馬トーヨーアサヒが出遅れ、レースは予想外の展開に。1番人気ハクホオショウは先行集団をリードするも、タケデンバードは外からマークし、勝負どころの直線ではラファールと共に抜け出します。しかし、ハクホオショウは粘り強く追い上げ、ゴール直前では、ハクホオショウが先着したように見える場面もありました。ところが、写真判定の結果、わずかな差でタケデンバードの優勝が確定。しかし、この判定は写真判定の不備による誤審疑惑が持ち上がり、大きな議論を呼びました。この事件をきっかけに、写真判定が義務付けられるようになったのは周知の事実です。

翌1973年、高松宮杯でも運命的な勝利を収めます。2番人気のハマノパレードが直線で落馬、競走中止というアクシデントが発生。そのため、2番手を走っていたタケデンバードは、全く不利を受けることなく1着でゴール。1番人気ベルワイドが3着に敗れたことで、高額配当の万馬券決着となりました。さらに、このレースでは馬主と調教師は不在、鞍上は初騎乗の蓑田早人騎手という、異例の状況でした。

高松宮杯連覇を狙った翌年のレースでは、当時最強馬として君臨していたハイセイコーに完敗。その後は、京王杯オータムハンデキャップで落馬競走中止、そして最後のレースとなった毎日王冠では、大きく離された最下位に終わりました。

タケデンバードの競走生活は、数々のアクシデントに見舞われた波乱に満ちたものでした。その勝利には、常に議論と疑惑が付きまとい、まさに「魔性の馬」と呼ぶにふさわしい存在だったと言えるでしょう。しかし、その強さと不運が交錯するドラマチックな生涯は、競馬史に刻まれた、忘れがたい一ページとなっています。そして、彼の存在は、競馬における写真判定の重要性を改めて認識させる契機ともなったのです。

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