タジン鍋

タジン鍋：北アフリカの伝統的な調理器具

タジン鍋は、円錐形または半円ドーム状の蓋を持つ独特な土鍋です。主にモロッコ、アルジェリア、チュニジアなどのマグリブ地域で使われ、この鍋を使った料理も「タジン」と呼ばれます。ただし、チュニジアのタジン鍋は形状が異なります。

タジン鍋の形状と機能

モロッコの伝統的なタジン鍋は陶製で、美しい絵付けが施されることもあります。本体は皿状で、蓋は円錐形またはドーム型をしています。この独特な形状は、食材から出る水蒸気を効率的に循環させるための工夫です。

円錐形の蓋の上部で水蒸気が冷やされて凝縮し、水滴となって食材に戻ることで、食材の水分だけで蒸し料理ができます。乾燥した地域では水が貴重だったため、このような調理法が発展しました。また、蓋と本体の間に水が溜まることで鍋内部が密封され、食材の香りが逃げにくいという利点もあります。

調理のポイント

タジン鍋は多孔質で吸水性があるため、水溶性ビタミンやミネラルの損失を抑えられます。蓋が高いので、野菜をたくさん入れても大丈夫です。ヨーロッパでは、電子レンジ対応のタジン鍋や、調理中でも野菜を追加できる取っ手付きの蓋のタジン鍋も開発されています。

モロッコで作られた伝統的なタジン鍋は素焼きの土鍋なので、直火で調理すると割れることがあります。最初は弱火で使い、使用前に水に浸しておくと長持ちします。丈夫な陶器や鉄器製のタジン鍋は、比較的扱いが簡単です。蓋が耐熱ガラス製のタジン鍋もあり、火加減や水分量を直接確認できます。直火用、電子レンジ用、IH調理器用など、用途に合った材質の製品を選びましょう。

加熱後は蓋が熱くなっているので、鍋つかみを使ってください。蓋を取る際は、湯気が顔にかからないように注意しましょう。

モロッコ料理としてのタジン

モロッコ料理のタジンは、スパイスで風味をつけた野菜（ジャガイモ、ニンジン、タマネギなど）と、鶏肉や羊肉を低温でじっくり煮込んだ料理です。ダッチオーブンや圧力鍋でも作ることができます。

食材

タジンには、ラム肉（首、肩、すね）やメルゲーズなどの安価な肉が使われることが多いです。肉の色が悪くても美味しそうに見せるために、少量の着色料を使うこともあります。魚、ウズラ、ハト、根菜、豆などを加えて煮込むこともあります。地域によっては、レモンチキン、アーモンド、干しスモモなどを入れることもあります。ソースには、オリーブ、蜂蜜、マルメロ、リンゴ、セイヨウナシ、アンズ、レーズン、プルーン、ナッツ類などを混ぜます。シナモン、サフラン、ショウガ、ウコン、クミン、パプリカなどのスパイスも使います。

調理のコツ

タジンの調理では、火加減と水分調節が重要です。弱火でじっくり煮込み、吹きこぼれないように注意します。食材の水分だけで調理できることもありますが、必要に応じて少量の水を加えることもあります。

盛り付け

モロッコのタジンは、タワスと呼ばれる独特の皿に盛り付けられます。

チュニジアのタジン

チュニジアのタジン鍋はモロッコのものとは形状が異なり、チュニジア料理のタジンもモロッコ料理とは大きく異なります。キッシュやフリッタータに似た料理で、細かく砕いた肉にラグーソースとスパイスを混ぜて煮込み、インゲンマメ、ヒヨコマメ、ジャガイモで作った生地にパセリ、ミント、サフラン、トマトをかけます。チーズと卵を入れることもあります。レモンと野菜を添えて完成です。

日本におけるタジン鍋

日本では、2006年にエミール・アンリ ジャパンがタジン鍋を試験販売し、2007年に全国発売しました。ヘルシーな蒸し料理がブームとなり、国内の陶磁器産地やガラス蓋、シリコンラバー製のタジン鍋も登場しました。2020年初頭にも健康志向の高まりとともに再び人気を集めています。

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