タヌキアヤメ

タヌキアヤメ

タヌキアヤメ（学名：Philydrum lanuginosum Banks）は、単子葉植物の一種で、タヌキアヤメ科に属する多年草です。

特徴

タヌキアヤメは、九州南部から南西諸島、中国、マレーシア、オーストラリアなどの温暖な地域に分布しています。湿地を好んで生育するやや大型の植物です。アヤメの名がついていますが、外見上の類似点は多くありません。

生育が良い場所では、大きな株立ちを形成します。葉は左右から扁平な形状をしており、単面葉と呼ばれる特徴的な構造をしています。葉の質感は柔らかく、厚みがあり、表面には柔らかい毛が密生しています。葉の基部は茎を大きく抱き込むように成長します。

開花時期は夏以降で、葉の間から花茎が長く伸び、高さは1メートルほどに達します。花序は穂状で、大きな株では枝分かれすることもあります。花は花茎の中ほどから上にかけてまばらに付き、花の基部には細長い苞が花茎を覆うように存在します。苞の背面には白い毛が多数生えています。

花は鮮やかな黄色で、左右対称の形をしています。花弁は大きく2枚に見え、1枚は花の上側に立ち、もう1枚は下側で花を支えるような形をしています。実際には、外側の3枚の花弁のうち2枚が融合していると考えられています。花の中心には雄しべと雌しべがそれぞれ1本ずつあり、その左右には小さな花弁状のものが存在します。内側の3枚の花弁のうち1枚は退化して消失し、残りの2枚が小さな花弁として残ったと考えられています。ただし、この内側の2枚の花弁状のものは、雄しべが変化したものであるという解釈も存在します。

名前の由来

タヌキアヤメの名前の由来は、白い毛が多い様子をタヌキに見立てたものとされています。アヤメとの類似性は低いものの、葉が単面葉であること、湿地に生育することなどが命名の理由と考えられます。日本においては特に利用されていませんが、中国南部では「田葱」と呼ばれ、薬草として用いられています。

分類

タヌキアヤメ科は、東南アジアからオーストラリアにかけて4属5種が存在しますが、日本にはタヌキアヤメの1種のみが自生しています。タヌキアヤメ属は、1属1種で構成されています。

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