タブ・ハンター

タブ・ハンター：ハリウッド黄金時代のスターとその波乱に満ちた人生

タブ・ハンター（1931年7月11日 - 2018年7月8日）は、20世紀中頃ハリウッドを彩った俳優、歌手、映画プロデューサー、そして作家である。ブロンドの美貌と清潔感のあるイメージで、1950～60年代の若者たちの憧れの的となり、40本以上の映画に出演する人気スターへと上り詰めた。しかし、その輝かしい経歴の裏には、複雑で興味深い人生が隠されていた。

困難な生い立ちとハリウッドへの道

ニューヨーク市マンハッタンで、ユダヤ系の父とドイツからの移民であるカトリックの母のもとに生まれたハンター。幼少期は、虐待的な父親と両親の離婚という苦境を経験する。母と兄と共にカリフォルニア州で暮らすことになり、カトリック学校に通いながら聖歌隊で歌っていたが、信仰への疑問を抱き、15歳で高校を中退。年齢を偽って沿岸警備隊に入隊するも、年齢がバレて除隊。その後、様々な仕事を転々とする中で、映画への関心を深めていく。

俳優を目指し始めたハンターは、後にジェームズ・ディーンやジェーン・フォンダの担当となるエージェント、リチャード・クレイトンの指導の下、演技の訓練を積む。しかし、ハンターは元々プロのフィギュアスケーターを目指していたほどスポーツに秀でており、演技のキャリアには当初懐疑的であった。それでもクレイトンに促され、本格的に俳優としての道を歩み始める。

華々しいキャリアの始まりとスターダム

エージェント、ヘンリー・ウィルソンによって「タブ・ハンター」という芸名を授かり、映画デビューを果たす。当初は小さな役柄が多かったが、『孤島の愛情』（1952年）でリンダ・ダーネルとの共演を経て注目を集め始める。ワーナー・ブラザースと専属契約を結び、『男の魂』（1955年）、『血ぬられし爪あと/影なき殺人ピューマ』（1954年）など、大ヒット作に次々と出演。特に、第二次世界大戦を背景にしたドラマ映画『愛欲と戦場』（1955年）での好演は、彼をハリウッドのトップスターへと押し上げた。

しかし、1955年にゲイであることを示唆するスキャンダラスな記事がタブロイド誌に掲載されたにも関わらず、彼のキャリアは順風満帆なままだった。その人気は絶大で、バレンタインデーには6万2千通ものファンレターが殺到するほどであった。ナタリー・ウッドとの共演作品もヒットを連発し、1950年代後半にはワーナー・ブラザースを代表するスター俳優として君臨した。

音楽活動と多様な挑戦

俳優業だけでなく、歌手としても成功を収める。1957年にリリースした「ヤング・ラヴ」は全米・英国チャートで1位を獲得し、ミリオンセラーとなった。この成功を機に、ワーナー・ブラザースは彼のためにレコードレーベルを設立するほどであった。しかし、ミュージカル映画『ウェスト・サイド物語』（1961年）の出演は逃し、代わりにコメディ番組「恋の手ほどき教えまショー」に出演。この番組はアメリカでは評価が低かったが、英国では人気を博した。

その後も様々なジャンルに挑戦し続ける。ブロードウェイ舞台への出演や、ウェスタン、戦争映画、ビーチパーティー映画など幅広い作品に出演。イタリア映画にも進出し、多様な才能を遺憾なく発揮した。しかし、1960年代後半にはキャリアのピークを過ぎ、徐々に映画出演が減少していく。

晩年と私生活

1970年代以降は、脇役としての出演やテレビドラマへの出演が中心となるが、ジョン・ウォーターズ監督作品などに出演し、俳優としての活動を継続。晩年には、自らの半生を綴った自伝『Tab Hunter Confidential: The Making of a Movie Star』を出版し、同性愛者であることを公表した。

ハンターは、長年にわたって映画プロデューサーのアラン・グレイザーとパートナーシップを結び、35年以上を共に過ごした。グレイザーの証言によると、2018年7月8日、自宅で肺塞栓症により死去。87歳だった。

タブ・ハンターの人生は、ハリウッドの華やかな世界と、その陰に潜む苦悩、そして愛と葛藤が複雑に絡み合った、まさにドラマチックな物語であったと言えるだろう。彼の残した作品群と、その人生は、これからも人々に語り継がれていくことだろう。

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