タブ (賭博)

タブとは

「タブ」は、日本で行われてきた本格的な賭博の一種です。「タブサイ」や「タブサキ」とも呼ばれますが、その名称の由来は定かではありません。主に数人（2人以上）で遊ばれ、3個のサイコロを使用して勝敗を決めます。

プレイ環境と基本的な流れ

ゲームは、中心に開いた穴にざるを取り付けた円卓を使うか、床などに置いたざるの周りにプレイヤーが円座になって行われます。各プレイヤーは、その回の賭け金となる金銭を自分の前に置きます。

参加者は「親」と「子」に分かれます。親が3個のサイコロをざるに投げ入れ、その出目によって親と子との間で勝敗が決まり、金銭のやり取りが行われます。子同士の直接の金銭のやり取りはありません。

このゲームの特徴の一つに、「廻り胴（回り胴）」と呼ばれる方式が挙げられます。これは、胴元が固定されず、親の権利が順番にプレイヤー間を巡るシステムです。専用の円卓は必須ではなく手軽さもあります。しかし、一般的に、こうした賭博の場には暴力団が関与したり、関係者が参加したりすることが多いとされています。この賭博は九州地方で生まれたとされ、やがて関西地方にも普及しました。

特有のルールと用語

タブでは、サイコロ3個の出目によって以下のように結果が定められています。

ナリ（成り）：親の勝ち。特定のゾロ目や3個の合計が8、9、18の場合。
ブチ：親の負け。特定の組み合わせ（例: 一二三）や3個の合計が11、12の場合。
ニゲ（逃げ）：引き分け。ナリやブチ、特定の組み合わせを除く、合計が4～7、10、13～17の場合。ニゲが出ると親の権利は右隣に移ります。
シゴロ（シンゴロウ、シゴロク）：四五六の出目。ナリ（親の勝ち）となります。
ヒフミ（イニサン、イチニッサン）：一二三の出目。ブチ（親の負け）となります。
ションベン（しょんべん、小便）／脱賽（ダッサイ）：投げたサイコロがざるからこぼれること。親の負けとなります。
サイ絡み：サイコロが出目を確定せず止まること。無勝負で振り直しとなります。

また、子の行動や親の交代に関わる用語もあります。

見（ケン）：子がその回の勝負に参加しないこと。
ミナ（皆）：親がすべての子と順に勝負する意思を示す言葉。発声しないと「ス」となります。
ス（素）：親が勝負相手を指定せずサイコロを投げること。無勝負となり親の権利は右隣に移ります（アライとも呼ばれます）。
親落ち：親がブチ、ニゲ、ス、ションベンにより親でなくなる状態。親の権利は右隣に移ります。
アライ（洗い）：親が続投できるのに、自ら親の権利を放棄し右隣に譲ること。「ス」と同義です。

ゲームの進行手順

ゲームは以下の流れで進行します。

1. 最初の親を決める：参加者全員がサイコロを一つ振るなどして決めます。
2. 賭け金を張る：親と子は、賭ける金額を自分の前に置きます。金額を指定する「…円通し」などもあります。勝負しない子（見）は賭け金の上に手を置きます。
3. 親がサイコロを振る：親は、すべての子と勝負する（ミナ）か、特定の子（…番、カタ、ケツなど）を指定してサイコロをざるに投げ入れます。
4. 勝敗と金銭のやり取り：出目に応じた結果で金銭がやり取りされます。
ナリ：親の勝ち。子が張った金額を親が受け取ります。
ブチ、ションベン：親の負け（親落ち）。親が張った金額を子に支払います。
ニゲ：引き分け（親落ち）。
ス：無勝負（親交代）。
* サイ絡み：無勝負で振り直し。
5. 親の交代または続行：結果により親が交代または同じ親が続行し、ゲームを繰り返します。

その他

タブはサイコロ3個を使う点で日本の大衆的なサイコロ賭博であるチンチロリンと似ていますが、親だけがサイコロを振るなどルールが異なります。地域によっては独自のローカルルールが存在し、例えばゾロ目（六六六）を「ナリ」ではなく「ニゲ」とみなす場合などがあります。

このように「タブ」は、特定のルールと用語を持ち、廻り胴方式を採用しながらも、その性質上、社会的な問題と関連付けられることの多い、日本のサイコロ賭博の一つです。

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