チンチロリンは、日本に古くから伝わる大衆的な
賭博ゲームです。数名で円陣を組み、3つの
サイコロと丼(または
茶碗)を使って行われます。
サイコロを丼に投げ入れる際の音から名付けられ、「チンチロ」と略されることもあります。
ゲームに参加する者は、賭け金となる「コマ」を賭けます。これは、チップや金銭などです。親が
サイコロを丼に投げ入れ、出た目によって勝敗が決まり、親と参加者間でコマのやり取りが行われます。参加者同士の直接的なやり取りはありません。
チンチロリンは、特別な道具を必要とせず、親の役割が順番に回っていく「廻り胴」方式です。
暴力団が関与するような大規模な賭場ではなく、主に仲間内で親睦を深める目的で楽しまれることが一般的です。
日本では古来からの
遊びと思われがちですが、
民俗学の研究によれば、
中国から伝わったとされています。戦地で流行し、第二次世界大戦後に日本に広まったと考えられています。
火野葦平の小説『麦と兵隊』にも、チンチロリンと類似の
賭博が登場します。
なお、
サイコロ3個を用いる類似の
ゲームとして「タブ」がありますが、ルールは大きく異なります。また、アメリカで親しまれるシーロウ(Cee-lo)は、チンチロリンを起源とする
変種ゲームと考えられています。
チンチロリンの用語
チンチロリンには、独特の用語が存在します。
目(出目、持ち目): サイコロ3個のうち2個が同じ目を出した場合、残りの1個の目を指します。例えば、1, 1, 3が出た場合、目は「3」となります。
アラシ(嵐): サイコロ3個全てが同じ目となるゾロ目です。無条件で勝ちとなり、コマの3倍を受け取ります。1が揃った「ピンゾロ」は特に強い役です。
シゴロ(シンゴロウ、シゴロク): 4, 5, 6が出た場合の役です。無条件で勝ちとなり、コマの2倍を受け取ります。
ヒフミ(イニサン、イチニッサン): 1, 2, 3が出た場合の役です。無条件で負けとなり、コマの2倍を支払います。
ションベン(しょんべん、小便): サイコロが1個でも丼からこぼれた場合です。無条件で負けとなり、コマを支払います。
目なし(目無し、凡): 3回投げて、目も役も出ず、ションベンにもならない場合です。無条件で負けとなり、コマを支払います。
ワカレ(分かれ、ワケ): 親と子の目が同じ場合の引き分けです。コマはそのまま戻り、支払いは行われません。
見(ケン): その回の勝負に参加せずに、結果を見守ること。
総取り(総カキ): 親が特定の目(111)を出して、子のコマを全て獲得すること。
総付け: 親が負け(特定の目、目なし、ションベン)の場合、全参加者にコマと同額を支払うこと。
倍付け: 親が特定の目を出した場合など、子にコマの倍額を支払うこと。
親立ち(巣立ち): 親が一定額以上のコマを獲得し、親の座を降りること。
五ビン(五貧): 親が強い目を出したにも関わらず、コマを失うこと。親の運気が下がっている兆候とされます。
親落ち: 親が特定の目、役、ションベンを出して、親の座を失うこと。親の権利は次の参加者に移ります。
アライ(洗い): 親が自ら親の座を放棄すること。
クズ(屑手): ションベンではないが、目も役にもなっていない状態。3回続くと目なしとなります。
1. 最初の親を決めます。
サイコロを振って一番大きい目を出した人が親になります。
2. 参加者はコマを賭けます。
3. 親が
サイコロを3個投げます。
4. 特定の目(111、456、123)が出た場合、その場で勝敗が決まり、コマのやり取りが行われます。
5. 特定の目以外が出た場合、親と子は順番に
サイコロを投げて、勝敗を決定します。
6. 3回投げて目も役も出なければ目なしとなり、負けとなります。
7. 配当のやり取り後、親が交代するか、そのまま
ゲームを続けます。
ローカルルール
地方や場所によって、様々なローカルルールが存在します。特に、アラシ(ゾロ目)の配当は地域によって異なり、ピンゾロ(111)は10倍、他のゾロ目は3倍というルールもあれば、ピンゾロのみ5倍、他のゾロ目はその数に応じた倍率というルールもあります。また、ションベンとヒフミの強さが逆転する場合もあります。
さらに、「胴前」制度というローカルルールもあります。これは、親が最初に賭け金を出し、その範囲内で勝負を行うというルールです。子の勝ちの総額が胴前を超えた場合、子は胴前までしか受け取れません。親は胴前を超える支払いを免れます。親は胴前の金額を倍以上にするまで親の座を続けることができます。
参考文献
谷岡一郎『確率・統計であばくギャンブルのからくり「絶対儲かる必勝法」のウソ』(講談社ブルーバックス、2001)
関連項目
秩父宮妃賜杯競輪
NKODICE(コンピュータゲーム)
賭博黙示録カイジ
* 粗品(お笑い芸人)