タプコプ遺跡
タプコプ遺跡は、北海道苫小牧市植苗に所在する、縄文時代中期末からアイヌ期に至る長い期間にわたる複合遺跡です。この遺跡は、植苗地区を流れる美々川のほとり、植苗橋のすぐ近く、国道36号に面した西側の丘陵地に位置しています。
遺跡名となっている「タプコプ」は、アイヌ語で「タプコプ・ウシ・イ」、すなわち「たんこぶがついている場所」という意味に由来するとされています。これは、美々川に向かってほぼ直角に張り出した、標高およそ18メートルの舌状の丘陵地を指しています。かつて、この丘陵は美々川の岸辺まで続いていましたが、1955年（昭和30年）頃に行われた国道拡幅・舗装工事によって大きく掘削され、現在はその面影を残すカッティングが見られます。
タプコプ遺跡は、苫小牧市内でも比較的早くからその存在が知られていましたが、具体的にいつ発見されたのかは明らかになっていません。1940年（昭和15年）に刊行された『苫小牧町史』には既にこの遺跡に関する記述があり、出土した遺物の写真も掲載されています。また、町史編纂の資料には、苫小牧東高等尋常小学校郷土研究部が作成した『郷土資料』の中でも触れられており、特に「考古序論」では、北海道帝国大学を卒業したばかりの名取武光や河野広道から指導を受けた調査の記録が記されています。
太平洋戦争終結後の1945年（昭和20年）には、千歳に進駐していたアメリカ軍人、ハワード・A・マッコードが軍務の傍ら遺跡調査を行い、タプコプ遺跡も訪れました。彼は帰国後、アメリカ地質調査所でこの遺跡から出土した木炭の放射性炭素年代測定を実施しました。その結果、「苫小牧植苗3230±160年」という年代が公表され、これは北海道内で初めて放射性炭素年代測定が実施され、公表された事例として知られています。1954年（昭和29年）には、苫小牧市開基80周年記念として河野広道が行った講演「苫小牧の古代史」（後に『苫小牧地方古代史』として刊行）でも、この遺跡が重要な位置を占めていました。
本格的な公的調査は、1963年（昭和38年）に北海道大学の大場利夫氏らによって開始されました。当初、調査が行われた箇所はA地点、B地点、C地点、D地点と呼ばれていましたが、「A地点の中にB地点が含まれる」といった混乱を招きやすい状況でした。そのため、1983年（昭和58年）の調査を機に、より整理された以下の地区区分が用いられるようになりました。
A地区: 主に台地上部にあたります。縄文時代中期末には人々の集落が営まれ、その後、縄文時代晩期から続縄文時代にかけては集団墓地として利用された痕跡が見つかっています。
B地区: 国道沿いの札幌側にある低地部分です。ここから発見された遺物の多くは現代のものでしたが、擦文時代の遺構や遺物も確認されています。
C地区: 植苗神社が建つ丘陵地です。ここでは擦文時代の竪穴住居跡が発見されています。
D地区: B地区の南側に広がる低地部分です。
1963年から1965年にかけて、大場利夫氏らが中心となり、第1次から第4次までの調査が行われました。
第1次調査（1963年10月）では、小規模ながらも、多数の副葬品を含むアイヌ期の墳墓や、縄文時代中期の墳墓2基が見つかりました。
第2次調査（1964年6月）は台地下の平坦地で行われ、続縄文時代の墳墓4基が確認されました。
第3次調査（1964年10月）では、植苗神社近くの台地裾で、擦文時代の煙道を持つ住居跡1基が検出されました。
第4次調査（1965年）では、再び台地の平坦部が調査対象となり、3基の墳墓が見つかりました。これらの墓からは、糊状になった状態の人骨や少量の土器片が出土したほか、縄文時代中期を中心とする各時代の遺物も包含層から発見されています。
昭和40年代後半以降、交通量の増加に伴い、国道36号線の拡幅が求められるようになりました。しかし、工事に先行して行われるべき遺跡の事前調査は、苫小牧市教育委員会が同時期に苫小牧東部工業地帯での調査に重点を置いていたことや、遺跡周辺の土地所有者との用地買収交渉が難航したことにより、長らく先送りされていました。状況が進展したのは1983年（昭和58年）になってからです。室蘭建設開発部と土地所有者との間で具体的な話し合いが進み、まず土地所有者の移転先調査を行い、それに基づいて移転を完了させた後、苫小牧東部工業地帯の調査終了を待って、タプコプ遺跡の調査を開始することが決定されました。この発掘調査は、1983年8月1日に始まり、調査中に人骨が出土したことによる2回の慰霊祭を挟みながら、同年10月29日に終了しました。
タプコプ遺跡は、縄文時代からアイヌ期にかけての長期にわたる人々の活動を示す貴重な遺跡であり、北海道、特に胆振地方の古代から近世にかけての歴史や文化を理解する上で、非常に重要な役割を果たしています。
遺跡の名称と地形
遺跡名となっている「タプコプ」は、アイヌ語で「タプコプ・ウシ・イ」、すなわち「たんこぶがついている場所」という意味に由来するとされています。これは、美々川に向かってほぼ直角に張り出した、標高およそ18メートルの舌状の丘陵地を指しています。かつて、この丘陵は美々川の岸辺まで続いていましたが、1955年（昭和30年）頃に行われた国道拡幅・舗装工事によって大きく掘削され、現在はその面影を残すカッティングが見られます。
調査の歴史と地区区分
タプコプ遺跡は、苫小牧市内でも比較的早くからその存在が知られていましたが、具体的にいつ発見されたのかは明らかになっていません。1940年（昭和15年）に刊行された『苫小牧町史』には既にこの遺跡に関する記述があり、出土した遺物の写真も掲載されています。また、町史編纂の資料には、苫小牧東高等尋常小学校郷土研究部が作成した『郷土資料』の中でも触れられており、特に「考古序論」では、北海道帝国大学を卒業したばかりの名取武光や河野広道から指導を受けた調査の記録が記されています。
太平洋戦争終結後の1945年（昭和20年）には、千歳に進駐していたアメリカ軍人、ハワード・A・マッコードが軍務の傍ら遺跡調査を行い、タプコプ遺跡も訪れました。彼は帰国後、アメリカ地質調査所でこの遺跡から出土した木炭の放射性炭素年代測定を実施しました。その結果、「苫小牧植苗3230±160年」という年代が公表され、これは北海道内で初めて放射性炭素年代測定が実施され、公表された事例として知られています。1954年（昭和29年）には、苫小牧市開基80周年記念として河野広道が行った講演「苫小牧の古代史」（後に『苫小牧地方古代史』として刊行）でも、この遺跡が重要な位置を占めていました。
本格的な公的調査は、1963年（昭和38年）に北海道大学の大場利夫氏らによって開始されました。当初、調査が行われた箇所はA地点、B地点、C地点、D地点と呼ばれていましたが、「A地点の中にB地点が含まれる」といった混乱を招きやすい状況でした。そのため、1983年（昭和58年）の調査を機に、より整理された以下の地区区分が用いられるようになりました。
A地区: 主に台地上部にあたります。縄文時代中期末には人々の集落が営まれ、その後、縄文時代晩期から続縄文時代にかけては集団墓地として利用された痕跡が見つかっています。
B地区: 国道沿いの札幌側にある低地部分です。ここから発見された遺物の多くは現代のものでしたが、擦文時代の遺構や遺物も確認されています。
C地区: 植苗神社が建つ丘陵地です。ここでは擦文時代の竪穴住居跡が発見されています。
D地区: B地区の南側に広がる低地部分です。
主要な発掘調査
1963年から1965年にかけて、大場利夫氏らが中心となり、第1次から第4次までの調査が行われました。
第1次調査（1963年10月）では、小規模ながらも、多数の副葬品を含むアイヌ期の墳墓や、縄文時代中期の墳墓2基が見つかりました。
第2次調査（1964年6月）は台地下の平坦地で行われ、続縄文時代の墳墓4基が確認されました。
第3次調査（1964年10月）では、植苗神社近くの台地裾で、擦文時代の煙道を持つ住居跡1基が検出されました。
第4次調査（1965年）では、再び台地の平坦部が調査対象となり、3基の墳墓が見つかりました。これらの墓からは、糊状になった状態の人骨や少量の土器片が出土したほか、縄文時代中期を中心とする各時代の遺物も包含層から発見されています。
昭和40年代後半以降、交通量の増加に伴い、国道36号線の拡幅が求められるようになりました。しかし、工事に先行して行われるべき遺跡の事前調査は、苫小牧市教育委員会が同時期に苫小牧東部工業地帯での調査に重点を置いていたことや、遺跡周辺の土地所有者との用地買収交渉が難航したことにより、長らく先送りされていました。状況が進展したのは1983年（昭和58年）になってからです。室蘭建設開発部と土地所有者との間で具体的な話し合いが進み、まず土地所有者の移転先調査を行い、それに基づいて移転を完了させた後、苫小牧東部工業地帯の調査終了を待って、タプコプ遺跡の調査を開始することが決定されました。この発掘調査は、1983年8月1日に始まり、調査中に人骨が出土したことによる2回の慰霊祭を挟みながら、同年10月29日に終了しました。
タプコプ遺跡は、縄文時代からアイヌ期にかけての長期にわたる人々の活動を示す貴重な遺跡であり、北海道、特に胆振地方の古代から近世にかけての歴史や文化を理解する上で、非常に重要な役割を果たしています。
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