擦文時代

擦文時代とは

擦文時代（さつもんじだい）は、北海道の歴史上、約7世紀から13世紀にかけて栄えた擦文文化の時期を指します。この時期は、飛鳥時代から鎌倉時代後期にあたります。擦文文化は、特にその土器において特徴的なスタイルを持ち、他の文化の影響を強く受けています。特に本州の土師器との関連が見られ、擦文土器はその技術を取り入れた結果とされているのです。

時代背景と文化

擦文文化の形成は6世紀後葉から7世紀初頭にかけて始まり、土器の製造技術は続縄文時代からの進化を遂げました。擦文土器には、木のへらで表面を擦ることによりできた模様が見られ、この技法が「擦文」という名称の由来となっています。土器の型式は、北大Ⅱ式が続縄文土器に分類され、北大Ⅲ式から擦文土器に移行します。

この時代の土器は、北部を含む北海道の文化が進化する中で、形状や模様に多様性が見られました。特に、9世紀には独特の刻目状文様がある擦文土器が登場し、文化の特徴をさらに引き立てます。しかし、擦文文化からアイヌ文化への変遷については、詳細は明らかではなく、遺跡の発見が限られているため、研究が続けられています。

社会と生活様式

擦文時代の人々は、狩猟採集社会に適した生活様式を持っていました。彼らは、春から秋にかけて河川での漁労を行い、寒い季節にはサケやマスを捕らえるために、常呂川や天塩川周辺に集落を形成しました。住居としては、竪穴建物を利用し、適切な居住環境を確保するために周辺環境を考慮した集落設計がなされていました。

栽培に関しては、雑穀の栽培が行われ、米も限られた形で取り入れられていました。これは本州との交易を通じて得られたと考えられています。また、擦文時代には鉄器が普及し、石器の使用は次第に減少しました。刀子や斧、装身具などのさまざまな金属製品は、主に本州との交易で入手されたもので、これにより生活の質が向上しました。

死と埋葬

擦文文化の人々は、一般的に伸展葬の埋葬形態を採用し、8世紀後半には小型の古墳が石狩低地帯に作られました。これらの墳丘墓は、東北地方北部の終末期古墳と類似しており、地域間の交流を伺わせます。また、10世紀半ばから12世紀初めには防御性の環濠集落が多く見られ、これは「えみし」から「えぞ」への文化的転換を示唆しているという見解もあります。

文献史料と遺跡

擦文時代に関する情報は、主に道外の文献から得られています。『日本書紀』などには、擦文文化に関連する記録が残されており、これに基づいて地域の歴史を推測することができます。特に、渡島地域の蝦夷に関する記事は、擦文文化の人々に関する重要なデータともなっています。

また、現代においてはいくつかの遺跡が見学可能で、常呂遺跡や北斗遺跡、標津遺跡群などがそれにあたります。これらの遺跡は、擦文文化の実態を知る手がかりとなっており、訪問者はこの独特な文化の痕跡を直接感じることができます。これらの遺跡は、歴史の中での擦文文化の意義を深く理解するための貴重な場となっています。

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