タマムシ

タマムシ（ヤマトタマムシ）の特徴と生態

タマムシ科は日本国内に多くの種が存在しますが、特にヤマトタマムシ（学名：Chrysochroa fulgidissima）は、古くからその美しい外観から珍重されてきました。一般的にタマムシというと、このヤマトタマムシを指すことが多いです。また、この種はフタスジアオタマムシやフタスジルリタマムシとも呼ばれています。

形態的特徴

ヤマトタマムシは、米のように細長い形状の甲虫で、全体が緑色の金属光沢を持っています。背中には虹のような赤と緑の縦じまがはっきりと見られます。この美しい金属光沢は天敵である鳥にとって「色が変わる物」として恐れられ、鳥を近寄らせない役割を果たしています。

体長は約30～40mmで、頭部には特徴的な縦溝と点刻があり、雄と雌で複眼の大きさが異なります。触角は特に第4節以降が鋸歯状になっています。前胸の背面は両端近くに多くの点刻がありますが、中央部は滑らかな質感を持っています。また、前翅には4条の縦方向の隆起がありますが、基部に近い部分ではあまり目立ちません。

わずかに小さな犬歯のような尖った先端を持つ前翅と、光沢のない黒い触角はその特長的な外観を醸し出します。腹部の末端は雄では三角形に窪み、雌では丸い形状をしています。

生態

ヤマトタマムシは、日差しの強い日によく活動し、成虫はエノキやケヤキの生える広葉樹林を飛び回ります。夜になると、木の幹の影に身を潜めて静かに過ごします。北海道には生息していないものの、本州、四国、九州などの広範囲で見ることができます。

特に特徴的なのは、エノキやケヤキの幹を刃物で切った際に、香りを求めて集まり、数匹で乱舞する姿です。また、竹の乾燥した垣根や突き出た枯れ枝で日光浴をしている姿も見られます。警戒心が強く、動きが機敏なため、近づくとすぐに姿を隠すことが多いです。

卵はエノキやマキなどの樹皮の割れ目に産み付けられ、幼虫は幹の内部に穴を開けて食害を行います。このため、木が倒れたり折れる事故の原因となることがあります。果樹園の経営者や庭師にとっては忌み嫌われる存在かもしれません。

分布と分類

日本では、本州、四国、九州、佐渡、対馬、屋久島、種子島と、南西諸島にも広く分布しています。また、国外では朝鮮半島南部や中国中南部、台湾、インドシナ半島にも分布が確認されています。

ヤマトタマムシが属するルリタマムシ属には、オガサワラタマムシという固有種もおり、こちらは小笠原諸島にのみ生息しています。さらに、南西諸島に見られる亜種であるオオシマルリタマムシは、体型や色合いに特徴があります。

利用

ヤマトタマムシの美しい鞘翅は、構造色により金属光沢を保ち、死後も色褪せることなく、装飾品として利用されることがあります。特に法隆寺の「玉虫厨子」の装飾として有名です。加工の過程では、レジンで包まれることもあり、その保存性を高めています。また、「玉虫色」という言葉は、この虫の羽の色が光の加減で変わることに由来しています。日本では、タマムシを箪笥に入れておくと着物が増えるという俗信も存在しています。

このように、ヤマトタマムシはその美しさだけでなく、生態や文化的な背景においても日本の自然に貢献しています。

もう一度検索