玉虫厨子

玉虫厨子（たまむしのずし）

玉虫厨子は、奈良県斑鳩町にある法隆寺が所蔵する飛鳥時代の厨子であり、その名は装飾に用いられた玉虫の羽に由来しています。この作品は国宝に指定されており、古代日本の美術や建築の重要な証しとされています。

厨子の概要

厨子とは、仏像などの礼拝対象を安置するための屋根付きの構造物で、さまざまな形式がありますが、玉虫厨子は古代の仏堂建築の外観を模した形式となっています。これにより、当時の日本建築を理解する上での貴重な資料となっています。

玉虫厨子の高さは約2.3メートルで、主要な素材は檜材ですが、一部は樟材が使用されています。全面は漆で塗装され、扉や羽目板には朱、黄、緑の顔料が施されて、仏教に関連する主題を描いています。また、細長い部材には金銅透彫の金具が取り付けられ、装飾の下には玉虫の羽が施されていますが、現在ではほとんどその姿は見られません。

玉虫厨子は、台脚、須弥座部、宮殿部の3つの部分から成り立っています。宮殿部の屋根は入母屋造りで、観音開きの扉が正面と両側に設置されています。内部の装飾には金銅打ち出しの千仏像が施されており、蓮弁部やその他の部分にも色漆で様々な模様が描かれています。

歴史的背景

玉虫厨子に関する最古の記録は、天平19年（747年）の『法隆寺伽藍縁起并流記資財帳』に見られ、その中で「宮殿像二具」として登場します。この文献には、「金埿押出千仏像」とも記載されており、多くの研究者によって玉虫厨子に関連付けられています。玉虫厨子の制作は7世紀にさかのぼり、かつては法隆寺の金堂に安置されていましたが、現在は大宝蔵院に保存されています。

そして、厨子の絵画は、宮殿部の正面扉に武装神将像が描かれており、左右には菩薩立像があります。背面には霊鷲山浄土図が描かれ、他にも「舎利供養図」や「捨身飼虎図」など多様な宗教的テーマが表現されています。これらの絵画は、日本最古とされる漆工芸の遺品であり、極めて貴重な文化的財産です。

建築的特徴

建築上、玉虫厨子は原始的な入母屋造を採用しており、急傾斜と緩やかな傾斜を持つ屋根を特徴としています。組物には法隆寺の西院伽藍で見られるデザインが影響を与えていますが、玉虫厨子独自の配置がされている点も注目です。全体として、7世紀の日本の仏教建築のスタイルを反映しており、貴重な資料とされています。

復元と展示

近年、玉虫の羽が劣化していることから、原本の状態を再現するレプリカが作成されています。1960年には日本鱗翅学会によって制作されたレプリカが展覧会に出展され、その後も何度か復刻版が作られています。また、平成20年には新たなデザインが評価され、グッドデザイン賞を受賞しました。

玉虫厨子は、技術的、芸術的に非常に高い評価を持つ作品であり、日本の仏教美術を理解するための重要な遺産であることは間違いありません。

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