タマン (香港)

タマン：ポルトガル初期の中国貿易拠点

タマン（Tamão）は、16世紀前半にポルトガル人が中国の珠江デルタに建設したとされる貿易拠点です。これは、喜望峰を回って東洋に進出したヨーロッパ人が最初に中国に到達した場所の一つとして知られています。この入植地は1514年に建設されましたが、わずか数年後の1521年には明の海軍によって排除され、その存在は短期間で幕を閉じました。

位置を巡る議論

1513年5月、ポルトガルの探検家ジョルジ・アルヴァレスが珠江デルタに到達し、ある島を「タマン」と名付けました。この名称は、それ以前から香港島や深圳西側の地域で使われていた「屯門（Tuen Mun）」という地名が転訛したものだと考えられています。そのため、一般的には現在の香港・新界の屯門とタマンが関連付けられます。

中国側の史料には、ポルトガル人が「屯門澳」付近に入植したと記録されていますが、その正確な位置は特定されていません。この不明瞭さが、歴史家の間で長年にわたる議論を呼んでいます。有力な説としては、屯門付近にある二つの湾、すなわち現在の屯門新市鎮に近い青山湾と、新界と南東（現在の深圳市南山区）の間にある后海湾（深圳湾）が挙げられます。後者の后海湾には明の防衛隊が駐留していたという記録も残っています。

タマンの位置特定の困難さ

ポルトガル側の文献では、タマンが「島」として記録されていることも、後世の研究者を混乱させる要因の一つです。屯門は島ではないため、タマンは屯門ではなく、近くの別の島を指しているのではないかという説が浮上しました。この説に基づき、J・M・ブラガはポルトガルの文献に登場するタマンを内伶仃島であると比定しました。この説は西洋の学界では広く受け入れられて定説となっています。

しかし、近年では中国の学界からこの説に対して、史実的な裏付けが不十分であるという批判が上がっています。中国の歴史家たちは、タマンをより大きなランタオ島と結びつけるなど、複数の異説を提唱しており、タマンの位置特定は依然として議論の的となっています。

このように、タマンの位置に関する議論は、ポルトガルと中国の史料の解釈の違い、地名の変遷、そして当時の地理情報の曖昧さなどが複雑に絡み合っており、未だ確定的な結論には至っていません。

まとめ

タマンは、ポルトガル人が16世紀初頭に中国本土に到達した重要な足跡を示す場所であり、その位置を特定する試みは、初期のヨーロッパと中国の接触史を理解する上で非常に重要です。今後の研究によって、タマンの正確な位置が明らかになることが期待されます。

関連情報

• - 関連項目

- 香港
- 香港の歴史
- マカオ
- マカオの歴史

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