タラゴン

タラゴン：魅惑のハーブとその活用

タラゴン(学名: Artemisia dracunculus)は、キク科ヨモギ属に分類される多年生[[植物]]で、ロシア南部や中央アジアが原産です。フランス語名エストラゴンでも知られ、独特の風味からフランス料理をはじめ世界中で愛用されています。日本ではホソバアオヨモギと呼ばれています。

特徴

1753年のリンネによる『植物の種』にも記載されているタラゴンは、草丈60cmほどに成長し、茎は直立してよく枝分かれします。葉は細長く先が尖った濃い黄緑色で、光沢があります。花はほとんど咲かず、結実しないため、挿し木や株分けで増やすのが一般的です。

香り

タラゴンの特徴的なアニスのような香りは、エストラゴールという成分によるものです。これはタラゴン香気成分の約6割を占めており、フランス語名エストラゴンはこの成分に由来します。この香りから、料理の他、食品や化粧品の香料としても利用されています。乾燥させる過程で葉に含まれる成分の一部が変化し、刈りたての干し草のような芳ばしい香りが加わります。

栽培

タラゴンは比較的育てやすく、日当たりがよく、水はけの良い土壌を好みます。年に2～3回の収穫が可能で、開花直前の香りが最も良いとされています。しかし、同じ株からの収穫を続けると香りが弱まるため、3～4年ごとに植え替えを行うのがおすすめです。

歴史

タラゴンの原産地は、ロシア南部から西アジア、東ヨーロッパ付近だと考えられています。紀元前500年頃にはギリシャで薬草として栽培されており、古代ギリシャの医師ヒポクラテスは、ヘビや狂犬の咬傷の解毒に用いていたと伝えられています。13世紀のイスラム世界の植物学者・薬剤師であるイブン・バイタールも、タラゴンの効能について記述を残しており、口臭予防や睡眠導入に効果があるとされていました。

用途

タラゴンは主に料理の風味付けに使われますが、食品香料だけでなく、化粧品の香料や他の香りの調整剤としても利用されています。

料理への活用

タラゴンは、その強い香りを生かすため、乾燥品ではなく生の葉を使うのが理想的です。ピリッとした辛みがあり、ドレッシングやサラダなどに最適です。フランス料理では欠かせないハーブで、タルタルソースなど様々なソースに加えられます。鶏肉、魚介、卵料理など、淡白な料理の風味を劇的に変えることから「魔法の竜」とも呼ばれています。オイルやビネガーに漬け込んで風味付けに使うことも可能です。タラゴンビネガーは白ワインビネガーにタラゴンを漬けたフランス料理定番の調味料です。また、チーズやサワークリームとの相性も良く、ディップなどにも利用できます。

薬効

タラゴンには、食欲増進、健胃・整腸作用、鎮痛作用があるとされ、痛風やリウマチにも効果があると言われています。

抗がん作用に関する研究

かつて、タラゴンはデザイナーフーズ計画において、癌予防効果の高い食材として位置付けられていました。

参考文献

猪股慶子 監修『かしこく選ぶ・おいしく食べる 野菜まるごと事典』成美堂出版、2012年
大槻真一郎、尾崎由紀子『ハーブ学名語源事典』東京堂出版、2009年
北野佐久子『基本ハーブの事典』東京堂出版、2005年
杉本順一『日本草本植物総検索誌』 I（双子葉篇）、六月社、1965年

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