デザイナーフーズ計画

デザイナーフーズ計画とは

デザイナーフーズ計画とは、1990年代にアメリカ国立癌研究所 (NCI) を中心に進められた、がん予防を目的とした研究プロジェクトです。この計画では、野菜や果物に含まれる化学物質（ファイトケミカル）に着目し、がん予防に役立つ可能性のある成分を特定し、それらを加工食品に添加することを目指しました。

計画の背景

1980年代、日本で「機能性食品」という概念が生まれ、健康志向の高まりとともに、食品の機能性に着目する動きが活発化しました。アメリカ国立癌研究所 (NCI) の毒物学者ハーバート・ピアソン博士は、この流れを受け、植物に含まれる天然の化学物質からがん予防の可能性のある物質を特定し、加工食品に含有させるというアイデアを考案しました。古くから民間療法として行われてきた植物由来の薬効に着目し、科学的な根拠に基づいてがん予防食品を開発しようとしたのです。

デザイナーフーズとは

デザイナーフーズとは、特定の健康効果を持つように設計された食品を指します。既存の食品に栄養素を強化したり、バイオテクノロジーや生物工学の手法を用いて開発されたりします。ビタミン強化グミ、ハーブ入りクラッカー、抗酸化物質入り清涼飲料水などが例として挙げられます。これらの食品は、「機能性食品」「強化食品」「栄養補助食品」などとも呼ばれます。

計画の内容

デザイナーフーズ計画では、過去の観察研究の文献調査に基づいて、がん予防効果が期待できる約40種類の野菜や果物をリストアップしました。ニンニク、緑茶、キャベツ、大豆、ショウガなどが含まれています。これらの食品に含まれる成分を特定し、加工食品に添加することで、がん予防効果を高めようとしました。

計画の課題

デザイナーフーズ計画には、いくつかの課題がありました。まず、リストアップされた食品のがん予防効果について、臨床試験で十分な証拠が得られていない点が挙げられます。また、健康効果があるとされる成分が、体内で利用できる形で、かつ効果を発揮するのに十分な量が含まれているという保証もありませんでした。

米国農務省の研究化学者であるゲーリー・R・ビーチャーは「どの食品もガンに対する特効薬にはなり得ない」と述べています。科学者たちは、動物実験で癌を予防することが分かった多くの化学物質が、人間での試験という試練にさらされたときに挫折したと指摘しました。

現在の状況

デザイナーフーズ計画は、10年後にリストを発表した後、終了しました。しかし、この計画がきっかけとなり、食品に含まれるがん予防効果が期待される成分に関する研究が進み、その成分をヒトに用いた臨床試験が行われるようになりました。現在では、デザイナーフーズという言葉はあまり使われなくなりましたが、機能性食品や健康食品の開発は、依然として盛んに行われています。

選定された食品

デザイナーフーズ計画で選定された食品は、ピラミッド状に3段階に分けられて公開されました。

第1段

ニンニク
キャベツ
甘草
大豆
ショウガ
セリ科の植物（セロリ、ニンジン、パセリなど）

第2段

タマネギ
緑茶
ウコン
柑橘類
ナス科の植物（トマト、ナス、ピーマンなど）
亜麻
全粒粉

第3段

ベリー類
アブラナ科の野菜（ブロッコリー、カリフラワー、芽キャベツなど）
メロン
* リンゴ


これらの食品は、がん予防に有効性があると考えられていますが、バランスの取れた食生活を基本として、これらの食品を摂取することが重要です。

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