タリスカー蒸留所

スカイ島の宝石、タリスカー蒸留所

スコットランド、スカイ島の荒々しい自然の中に佇むタリスカー蒸留所は、1830年の創業以来、その地で唯一の蒸留所として、独特の個性を持つウイスキーを造り続けています。その名は、古ノルド語で「傾いた大岩」を意味する「Thalas Gair」に由来すると言われています。

独自の製法

タリスカー蒸留所の製法は、他のアイランズモルトとは一線を画します。1928年まではアイルランド式の3回蒸留を採用しており、その名残として、2基のウォッシュ・スチルに対し3基のスピリット・スチルが設置されています。20世紀初頭に2回蒸留に切り替えられましたが、独自のポットスチルの形状など、その個性を維持するための工夫が凝らされています。

特に目を引くのは、ラインアームの独特なデザインです。ポットスティルから垂直に立ち上がり、水平に伸びた後、再び直角に下るU字型のねじれは、ウイスキーの還流を促し、より複雑な風味を生み出す役割を果たしています。また、くぼみの基部に取り付けられたピュリファイヤー・パイプも、ウイスキーの品質を高めるための重要な要素です。蒸留されたウイスキーは、伝統的なワームタブと呼ばれるコイル状の冷却槽で冷却され、液化されます。

スカイ島の歴史を刻む

タリスカー蒸留所の歴史は、スカイ島の厳しい自然と人々の生活に深く根ざしています。近隣のアイグ島から渡ってきたヒュー・マカスキルとケニス・マカスキルの兄弟が、スカイ島西岸の土地を借り、農業の傍ら自家蒸留を始めたのがその始まりです。当初はフィスカヴェイグに蒸留所を建設しようとしましたが失敗し、その後、ハーポート湖の湖畔にあるカーボストに建設する計画を立て、1830年、3000ポンドの費用を費やしてタリスカー蒸留所が誕生しました。

しかし、その道のりは決して平坦ではありませんでした。地元の神父ロデリック・マクラウドとの対立など、様々な困難に見舞われ、所有者は何度も変わりました。1880年代にはロデリック・ケンプの所有となり、その後、1925年にDistillers Companyに買収され、1986年にはギネスに買収されました。そして1997年以降は、ディアジオがその所有を引き継ぎ、現在に至っています。

「酒の王者」

タリスカー蒸留所の最大生産能力は190万リットル。シングルモルトとしてだけでなく、ジョニー・ウォーカーなどのブレンデッドウイスキーにもその原酒が供給されています。その品質の高さは、小説家ロバート・ルイス・スティーヴンソンが「酒の王者」と評したことからも窺い知ることができます。

スカイ島の荒々しい自然と、そこで生きる人々の情熱が育んだタリスカー。その一杯には、スカイ島の歴史と文化が凝縮されています。ぜひ、その奥深い味わいをじっくりと堪能してみてください。

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