タルガ・フローリオ

タルガ・フローリオとは

タルガ・フローリオ（Targa Florio）は、1906年から1977年までイタリアのシチリア島で開催された公道自動車レースです。このレースは、世界的に見ても最も歴史のあるスポーツカーレースの一つであり、合計61回の開催が行われました。タルガはイタリア語で「盾」を意味し、フローリオは大会の後援者であるフローリオ家から贈られた優勝者へのトロフィーを指します。

歴史的背景

タルガ・フローリオは、ル・マン24時間レースやミッレミリアと並ぶ、スポーツカーレースのクラシックイベントとして名高いです。曲がりくねった峠道を走るこの過酷なレースは、特にドライバーにとっての耐久力が試されるものでした。フローリオ家はシチリア島の富豪一族であり、自らもレース愛好者であったヴィンチェンツォ・フローリオが、1905年にコッパ・フローリオを寄贈したことがきっかけでこの大会の設立が決定しました。

最初のレースは1906年に行われ、10台が参加した中で5台が完走しました。初期の規定では「過去に10台以上生産された車」が参加資格とされていましたが、次第にスポーツカーも認められるようになりました。1915年から1918年の間は第一次世界大戦の影響により中断されましたが、1919年には再開され、フランスのプジョーが初の国外勢として優勝しました。

1920年代になると、グランプリマシンの参戦があり、特にブガッティやアルファロメオ、マセラティといった名車たちが優勝を重ねました。1941年から1948年までの間は第二次世界大戦の影響でふたたび中断されました。1950年代後半にはスポーツカー世界選手権の一部として数多くのワークスマシンが競い合い、ポルシェはこの時期に特に多くの勝利を収めました。しかし、1973年に高性能のプロトタイプカーの危険性が問題視されるようになり、以後はイタリア国内選手権としての競技に方向転換することになりました。

コースの特徴

レースのスタート地点はシチリア島北西部のチェルダ駅前で、ここから内陸部のマドニエ山脈へ向けて進んでいきます。ルートは時計回りに塩のような難所を通過し、再びチェルダに戻ってくる形をとっていました。初期のコースは未舗装のグラベルであるため、天候の変化や山賊の出没といった不確定要素も多く、ドライバーたちは技術と判断力を駆使する必要がありました。

競技結果と影響

このレースで特に目立ったのは、ポルシェ社の11勝、アルファロメオの10勝、フェラーリの7勝です。多くの有名ドライバーがこのレースに挑んでおり、特にウンベルト・マリオーリやニーノ・ヴァッカレッラがそれぞれ3勝を挙げています。ヴァッカレッラはシチリアの英雄として地元で熱烈な支持を受けていました。

タルガ・フローリオはその後、1978年からは「ラリー・タルガ・フローリオ」としてラリーイベントとしての名を残し、またタルガにちなんだイベントが世界各地で行われています。日本においても「淡路タルガ・フローリオ」という名称のイベントが1988年から開催されていました。このように、タルガ・フローリオは歴史の中でカーレースの重要な位置を占めており、今もなお多くの人々に愛されています。

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