タルテッソス

タルテッソス：古代 イベリアの謎多き王国

タルテッソスは、現在のスペイン南部アンダルシア地方、グアダルキビール川河口付近に存在したとされる古代王国です。その存在は、古代ギリシアやローマの歴史家、地理学者によって記録されていますが、確かなことは多くが謎に包まれています。

記録に残るタルテッソス

タルテッソスの名は、ヘロドトスの『歴史』、プリニウスの『博物誌』、ストラボンの『地理誌』など、古代の文献に散見されます。これらの記録から、タルテッソスが紀元前5世紀には存在していたことがわかります。特に、ストラボンの記録には、紀元前4世紀の探検家ピュテアスの伝聞に基づいた情報が含まれており、当時の状況を知る上で貴重な手がかりとなっています。また、4世紀のアヴィエニウスの紀行記『Ora maritima』にも、タルテッソスの記述が見られます。複数のローマの作家は、タルテッソスの名前が古代ギリシア語に由来する可能性を示唆しています。

繁栄の源：金属資源と交易

タルテッソスは、豊富な金属資源に恵まれた王国でした。紀元前4世紀の歴史家エフォラスは、「タルテッソスは非常に繁栄した市場であり、錫、金、銅が豊富である」と記しています。当時、青銅器の材料として不可欠な錫は希少価値が高く、タルテッソスの貿易は非常に有利なものでした。ヘロドトスの記録によれば、タルテッソスの王はアルガントニオスと呼ばれており、その名は銀によって富を得たことに由来すると考えられています。

紀元前8世紀頃から、タルテッソスの人々はイベリア半島に居住し、ガディール（現在のカディス）という港を築いたフェニキア人と重要な貿易関係を築きました。この交易は、タルテッソスの繁栄を支える大きな柱となったと考えられます。

タルテッソスの地理

古代の文献によると、タルテッソスは川の名前でもあったとされています。アリストテレスは、タルテッソス川がピレネー山脈から流れ出て、ジブラルタル海峡の外海に注ぎ込むと述べていますが、実際にそのような川はイベリア半島には存在しません。ピュテアスによると、紀元前4世紀にはトゥルドゥリ人がベティス川（現在のグアダルキビール川）流域をタルテッソスの地域として占めていたとされます。

宗教：多神教とフェニキアの影響

タルテッソスの宗教に関する情報は限られていますが、他の地中海民族と同様に、多神教であったと推測されています。タルテッソス人は、フェニキア文化の影響を受け、女神アスタルテやポトニア、男神バアルやメルカートを崇拝したと考えられています。カストゥロ（リナーレス近郊）やカルモナでは、フェニキア様式の聖域が発見されています。また、カディス、ウェルバ、セビリアでは、フェニキアの神々の彫像が発見されており、フェニキア文化との深い繋がりを示唆しています。

タルテッソス語：古代 イベリアの言語

タルテッソス語は、かつてイベリア半島南部で話されていた絶滅言語です。紀元前7世紀から6世紀にかけて、タルテッソス語で書かれたイベリア最古の碑文が発見されています。これらの碑文は、南西文字と呼ばれる半音節文字で記されており、タルテッソスの位置を示す重要な手がかりとなっています。

近年の研究

2009年以降、ウェルバ県のヒノホス湿地でタルテッソスに関する研究が進められていますが、その結果はまだ発表されていません。これらの研究によって、タルテッソスの謎が解明されることが期待されます。

参考文献

* VIOLAT BORDONAU, F. «Tartessos, Mastia y las rutas comerciales de la antigüedad», 2007.

タルテッソスは、その繁栄と謎に満ちた歴史で、今もなお多くの研究者や歴史ファンの興味を惹きつけています。

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