タルヤー

タルヤー(Tulyar)は、1952年の競馬史にその名を刻んだ伝説的な競走馬です。アイルランドで生まれ、イギリスで調教を受けました。小柄な体格(体高約153cm)と、闘争心とは程遠い穏やかな気性から、当初は競走馬としてはほとんど期待されていませんでした。

デビュー当初は平凡な成績でしたが、3歳シーズンから驚異的な活躍を見せ始めます。エプソムダービー、エクリプスステークス、キングジョージ6世＆クイーンエリザベスステークス、そしてセントレジャーステークスと、英国の主要クラシック競走を次々と制覇していきました。2000ギニーを回避したため「幻の三冠馬」と呼ばれることもあります。特に、当時世界最高賞金レースだったキングジョージ6世＆クイーンエリザベスステークスを制したことで、獲得賞金は6万796ポンドに達し、1895年にアイシングラスが記録した5万8655ポンドを抜き、史上最高賞金獲得馬となりました。

3歳シーズン終了時点で獲得賞金は7万6417ポンドに上り、現役続行も検討されましたが、アイルランドのナショナルスタッドから高額な買い取り申し入れがあり、3歳で競走馬を引退することになります。その際の売却額27万5000ドルも当時世界最高額でした。

種牡馬としてはアイルランドとフランスで牝馬クラシック優勝馬を輩出するなど成功を収めますが、3年目の種付けシーズン終了後、67万2000ドルという高額でアメリカのクレイボーンファームに売却されました。アメリカでの活躍は目覚ましいものではありませんでしたが、1972年に老衰で亡くなりました。

タルヤーの血統背景も非常に注目に値します。父はセントレジャーステークス優勝馬のテヘランで、1952年の英リーディングサイアーに輝きました。母ネオクラシーはイギリスで5戦2勝の戦績を残し、タルヤーとセントクレスピンの他に、イタリアオークス優勝馬アンティクレアの母アンドロメダ、さらにはその孫に日本で重賞4勝を挙げたハクホオショウといった名馬を輩出しています。2代母Harinaには、二冠馬Trigo、愛二冠馬Harinero、ドンカスターカップ優勝馬アスフオード、そして愛二冠馬プリメロといった、錚々たる競走馬の兄弟がいます。

その半弟には、凱旋門賞優勝馬で日本にも輸出され種牡馬として成功を収めたセントクレスピンがいます。さらに、母の伯父にはアイルランドの二冠馬で、日本でも種牡馬として成功したプリメロがいます。これらの血統背景からも、タルヤーの偉大さが伺えます。タルヤーは、その競走成績だけでなく、その血統が現代競馬に与えた影響も非常に大きい、まさに伝説的名馬と言えるでしょう。

主な産駒には、Ginetta（仏1000ギニー、フォレ賞）、Fiorentina（アイリッシュ1000ギニー）、Paris Pike（ハリウッドオークス）、Dingle Bay（ハリウッドオークス）、Castle Forbes（エイコーンステークス、ソロリティーステークスなど重賞3勝）などがいます。これらの産駒も、それぞれ活躍し、タルヤーの血統の素晴らしさを示しています。タルヤーの血統は、現代競馬においても大きな影響を与え続けており、その偉大な功績は、これからも語り継がれていくことでしょう。

もう一度検索