タロム航空381便事故

タロム航空381便事故について

タロム航空381便事故は、1994年9月24日にアウレル・ヴライク国際空港を出発し、パリ＝オルリー空港へ向かっていたエアバスA310-325に発生した航空事故です。この事故では幸いにも186名の乗員および乗客は全員無事でしたが、航空業界における重要な教訓を残しました。

事故の概要

タロム航空381便は、オルリー空港への進入中に失速し、その結果として急降下を経験しました。事故の機体は1992年に同航空会社に納入されたエアバスA310-325（機体番号：YR-LCA）で、事故後も運用が続けられ2018年にはアルメニア・エアウェイズに売却されました。

事故の経緯

タロム381便は、アウレル・ヴライク国際空港を10時40分に到着予定で出発しました。オルリー空港のATISでは、滑走路26が使用可能で、視程10km、2,400フィートの地点には雲が報告されていました。10時30分に機体は巡航高度の35,000フィートから降下を開始し、10時38分39秒にはムランVORを通過しました。

その後、10時41分01秒には、管制官から滑走路26へのILS進入のために方位310度への変更指示を受け、自動操縦での着陸進入を続けました。10時42分53秒にはフラップとスラットが15度に設定されましたが、機長は自動操縦の解除を行い手動での進入を進めました。

事件の発生

その後、機長は速度が195ノット（361km/h）に達した際にフラップを20度に設定しましたが、この時速度制限をわずかに超えていました。フラップを展開したことで揚力が増加し、機体が上昇を始めました。これに対処するために機長はサイドスティックを操作し、スロットルをアイドルに下げましたが、上昇の勢いは収まりませんでした。

数秒の内に機体は60度近くの上昇角度となり、目撃者は急上昇する381便を確認しました。結果として、機体は失速し33度の降下角度で地表へ落下しました。その際、機長は管制官に「メーデー」と伝え、数回のやり取りの後に800フィート付近で機体の立て直しに成功しました。

事故調査

フランス航空事故調査局（BEA）は事故の調査を行い、最終的な報告書では機体の異常な機首上げと失速が発生した原因として、水平安定板の動きが関連していることを指摘しました。特に、機長が自動操縦の復帰方法について理解が不足していたことが、この事態に繋がったとしています。

また、他の要因として以下の点が挙げられました：

• - 降下が遅れたため、高速での着陸進入が強いられ、操作手順が省略されたこと。
• - クルー・リソース・マネジメントの不適切さ。
• - 着陸高度の設定が早すぎたこと。
• - フラップとスラットが急激に設定されたことによる速度保護機能の作動。

勧告

1994年10月14日、フランス民間航空総局（DGAC）は、A300-600およびA310を運用する航空会社に対し、運航上の速度を厳守し、乗員に対して機体のAFSの特性について周知するよう勧告しました。さらに1995年にはBEAが自動操縦よりもパイロットの操作を優先する調査を求めるなど、関連する手順の見直しが進みました。

この事故は、航空業界における安全性の向上に向けた重要な指針となりました。

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