タロム航空

ルーマニアの翼：タロム航空の歴史と変遷

タロム航空は、ルーマニアを代表する国家航空会社として、長い歴史と伝統を誇ります。その名称はルーマニア語で「ルーマニア航空輸送」を意味し、同国の空の玄関口として、長きにわたって人々の移動を支えてきました。本稿では、タロム航空の設立から現在に至るまでの歴史、機材の変遷、そして国際的な航空会社としての成長について詳細に解説します。

黎明期：小さな一歩から

1920年、CFRNAという名称で設立されたタロム航空は、フランス製のポテ15を使用し、パリとブカレストを結ぶ路線を開設しました。当初は旅客と貨物の輸送を組み合わせたサービスを行い、その後、ルーマニア国内への路線網を拡大していきます。ガラツィ、ヤシ、キシナウといった主要都市へ定期便を就航させ、着実にその存在感を高めていきました。黎明期には、デ・ハビランドDH.9やアンサルドA.300といった機種も導入され、時代の流れとともに航空機の更新が進められました。幾度かの名称変更を経て、1937年にはSARTAとの合併に至り、より大きな航空会社へと成長していきました。

東側陣営時代：ソ連機との歩み

第二次世界大戦後、ソ連の影響力が増大する中、タロム航空は1945年にTARSとして再出発しました。当初はソ連とルーマニアの共同所有でしたが、その後、ルーマニア政府が全株式を取得、そして1954年に現在の「TAROM」へと改称されました。ソ連製の航空機を導入し、ヨーロッパ各地への路線網を拡大。1960年代にはヨーロッパ中の12都市に就航し、1966年には初の大西洋横断飛行を達成するなど、国際的な航空会社としての飛躍を遂げました。1974年にはニューヨークへの定期便就航を開始し、世界へ羽ばたいていきます。

この時代、タロム航空はLi-2、Il-14、Il-18、Il-62、An-24、Tu-154といったソ連製の旅客機を多く運用していました。Il-62は、当時としては長距離路線に適した機体として、重要な役割を果たしました。しかし、ソ連機のみならず、1968年にはBAC 1-11を導入し、ヨーロッパと中東路線に投入。1974年にはボーイング707も導入することで、多様な機材による運航体制を構築しました。1978年にはRombacとの協定により、BAC 1-11の製造にも携わるなど、航空機産業への関与も深めていきます。 イスラエルのテルアビブへの路線開設も特筆すべき点で、東側陣営の航空会社としては異例な取り組みでした。この時代にはハイジャック事件といった困難にも直面していますが、それを乗り越え、成長を続けています。

変革の時代：西側機材の導入と路線再編

1989年のルーマニア革命後、タロム航空は西側諸国の航空機を購入できるようになりました。1990年代には、エアバスA310を導入し、長距離路線であるモントリオールやバンコクへの就航を実現しました。しかし、長距離路線の採算性に課題が見えたことから、2000年代初頭には路線の廃止を決断。一方で、利益を重視した路線再編を実施し、ヨーロッパや中東路線への注力を開始しました。国内路線でも不採算路線を廃止するなど、経営効率化に努めています。2004年には過去10年間で最高の収益を達成しました。

21世紀のタロム航空：新たな飛躍

2000年代以降、タロム航空は、ブカレストのアンリ・コアンダ国際空港やクルージュ＝ナポカ国際空港を拠点とし、シビウ国際空港からも国際線を運航するなど、路線網の最適化を図りながら、着実に成長を続けています。エアバスA318、ボーイング737-800、ATR 72-500といった新型機の導入による機材の近代化も進められています。2010年にはスカイチームに加盟し、国際的な航空連合の一員となりました。マイレージサービスもSmart MilesからFlying Blueへと変更され、顧客サービスの向上にも努めています。現在もヨーロッパ諸国や中東地域を中心に、国際線ネットワークを展開しています。

まとめ

タロム航空は、設立から今日まで、幾多の変遷を経てきました。ソ連時代の航空機運用から西側機材への移行、路線の再編、スカイチームへの加盟など、常に変化に適応しながら成長を続けてきた歴史は、その強さと柔軟性を示すものです。今後、タロム航空がどのような進化を遂げるのか、その動向に注目が集まります。

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