タワー42

ロンドンのランドマーク、タワー42：歴史と魅力に迫る

ロンドンのシティ・オブ・ロンドンに位置するタワー42は、イギリスを代表する超高層ビルのひとつです。かつてはロンドン、そしてイギリスで最も高いビルとしてその名を馳せ、シティ・オブ・ロンドンにおいても長年その地位を保ちました。

ナットウエスト銀行と、その象徴的なデザイン

元々はナショナル・ウエストミンスター銀行（ナットウエスト）のために建設され、「ナットウエスト・タワー」として開業しました。1971年から1979年にかけて、建築家リチャード・セイファートのデザインにより建設され、総工費7200万ポンドという巨額の費用が投じられました。特徴的な三角形の模様が重なり合うその外観は、ナットウエスト銀行のロゴマークを彷彿とさせます。

イギリス最高層ビル、そして論争

183メートルの高さは、1990年にワン・カナダ・スクウェアが完成するまで、イギリスで最も高い建造物としての地位を確立しました。シティ・オブ・ロンドン初の超高層ビルという快挙の裏には、当時の建築基準を大きく超える計画であったことによる激しい論争がありました。

タワー42は、巨大なコンクリート軸を基礎とするカンチレバー構造を採用しています。この構造は、隣接する建物を尊重しながら、最大限の空間利用を図るという設計思想に基づいていますが、結果としてオフィス空間を制限する要因にもなりました。特に、金融取引の激変期である「ビッグバン」後には、広々とした取引フロアが不足するなど、時代遅れと見なされることとなりました。しかしながら、このカンチレバー構造は、一時的に世界で最も高いカンチレバー構造の建物としての記録も樹立しています。

IRA爆弾テロと、再生

1993年4月、IRA暫定派による大規模な爆弾テロ事件が発生。タワー42も深刻な被害を受け、建物の再建と内部改装を余儀なくされました。この事件による損害は10億ポンド以上に上ったと言われています。

この事件を契機に、ナットウエスト銀行はタワー42からの撤退を決定。その後、グレイコート社が建物を取得し、42階建てであることから「タワー42」と改称、現在では多目的オフィスビルとして多くの企業がテナントとして入居しています。

上質な空間と絶景

タワー42は、最上階42階に「バーティゴ42」という高級バーを併設しています。ここでは、厳選されたシーフードとシャンパンを楽しみながら、西向きに広がるロンドン中心部の壮大なパノラマを堪能できます。また、24階には、イギリスを代表するシェフ、ゲイリー・ローズが経営するレストラン「ローズ・トゥエンティーフォー」も存在します。

文化とエンターテイメントとの関わり

「42」という数字は、イギリスのSFテレビドラマ『銀河ヒッチハイク・ガイド』において、生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答えとして言及され、タワー42は、物語において地球の破滅に関わる象徴的な存在として登場しています。さらに、イギリスの人気自動車番組『トップ・ギア』においても、タワー42がゴール地点として登場したレースが放送されました。

今なお続くロンドンのシンボル

タワー42は、ロンドン、ひいてはイギリスにおける超高層建築の歴史を象徴する存在です。かつてイギリス最高層ビルとして君臨した栄光、IRA爆弾テロからの奇跡的な復興、そして現在も続く多様な用途での活用は、このビルの歴史の深さと魅力を物語っています。その独特の外観、高級レストラン、そして絶景のバーは、今後もロンドンを訪れる人々を魅了し続けるでしょう。

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