ターク・イ・ブスタン

ターク・イ・ブスタンは、イラン西部のケルマーンシャー近郊に位置する、サーサーン朝時代の貴重な遺跡です。1700年もの長きにわたり風雨にさらされながらも、その巨大なレリーフ彫刻は驚くほど良好な状態で保存されており、訪れる人々を魅了し続けています。

この遺跡の最大の特徴は、岩山を掘り込んで作られた石窟に彫られたレリーフです。これらのレリーフは、サーサーン朝の王たちの業績や宗教観を今に伝える貴重な資料となっています。石窟は大小二つあり、それぞれ異なる時代に造営されました。

小さい石窟は、4世紀のシャープール3世（在位383年 - 388年）によって造られました。一方、大きい石窟は、6世紀から7世紀にかけてホスロー2世によって造営されたものです。ホスロー2世の石窟は特に壮大で、サーサーン朝美術の最高傑作の一つとされています。

保存状態の良いレリーフの中には、アルダシール2世（在位379年 - 383年）やシャープール3世が、神々から王権を授与される様子を描いたものがあります。これらのレリーフは、当時の王権の正当性や宗教的な権威を示すために制作されたと考えられています。神々から王権を授与される場面は、サーサーン朝の王たちが自らを神聖な存在として位置づけようとしていたことを示唆しています。

ターク・イ・ブスタンのレリーフは、単なる美術品としてだけでなく、サーサーン朝の歴史や文化を理解するための重要な手がかりとなります。レリーフに描かれた人物の服装や装飾品、武器などは、当時の社会の様子を知る上で貴重な情報源です。

また、レリーフの様式や技法は、サーサーン朝美術の特徴をよく表しています。サーサーン朝美術は、古代ペルシャの伝統を受け継ぎながら、ギリシャやローマの影響も受けており、独特の美しさを持っています。ターク・イ・ブスタンのレリーフは、その代表的な例と言えるでしょう。

ターク・イ・ブスタンは、イランの豊かな歴史と文化を象徴する遺跡の一つです。その壮大なレリーフは、訪れる人々に深い感銘を与え、古代ペルシャへの旅へと誘います。遺跡を訪れる際には、レリーフに込められたメッセージや、その背後にある歴史的な背景に思いを馳せてみることをお勧めします。

もう一度検索