ターボチャージャーを純正採用したモーターサイクル

ターボチャージャー搭載モーターサイクルの黎明

1970年代後半、国内外の自動車メーカー間でターボチャージャー技術の開発競争が激化しました。その流れは二輪車業界にも波及し、各社が競ってターボチャージャー搭載モデルを開発しました。本稿では、1980年代前半に国内メーカーから実際に発売されたターボチャージャー搭載モデルに焦点を当て、その概要、採用モデル、技術的な詳細を解説します。

ターボチャージャー搭載モデルの概要

ターボチャージャーを搭載した国産四輪自動車の市販化を契機に、二輪車業界でもターボ化の動きが活発になりました。しかし、ターボラグ（レスポンスの遅れ）といった問題が浮上し、開発競争は短期間で収束しました。各社が1～2モデル程度を市場に投入したのみで、その後の継続的な開発には至りませんでした。

各メーカーの採用モデル

カワサキ

750TURBO
エンジン形式: 空冷738cc DOHC2バルブ並列4気筒ターボチャージャー付き
最高出力: 112PS/9000rpm
最大トルク: 10.1kg･m/6500rpm
乾燥重量: 233kg
最高速度: 235km/h
空冷エンジンを搭載したGPz750Fをベースにしたモデルで、1982年に北米と欧州市場で販売されました。正式名称は750ターボであり、GPz-Fの名称は冠しません。

Z1-R tc
エンジン形式: 空冷1015cc DOHC2バルブ並列4気筒ターボチャージャー付き
最高出力: 不明
最大トルク: 不明
乾燥重量: 246kg
最高速度: 不明
カワサキのアメリカ現地法人の企画で開発され、1978年に北米市場のカワサキディーラーで販売されました。グレードモデルの「tc」は、ターボチャージャーの頭文字から名付けられました。

スズキ

XN85
エンジン形式: 空冷673cc DOHC2バルブ並列4気筒ターボチャージャー付き
最高出力: 85PS/9000rpm
最大トルク: 7.3kg･m/7500rpm
乾燥重量: 225kg
最高速度: 206km/h
GS650Gカタナをベースに開発され、1982年に欧州市場向けに販売されました。正式名称の「XN85」は、同車の最高出力に由来します。

ホンダ

CX500TURBO
エンジン形式: 水冷496.9cc 縦置き水冷4サイクルV型2気筒OHV4バルブ IHIターボチャージャー付き
最高出力: 82PS/8000rpm (タイプCMは78PS)
最大トルク: 8.1kgm/7500rpm (タイプCMは7.5kgm)
乾燥重量: 239kg
最高速度: 200km/h以上
ヘッドライト上の「TURBO」の文字が鏡文字になっているのが特徴で、1980年代に流行した前走車のミラー越しに見ると読めるというデザインが採用されています。

CX650TURBO
エンジン形式: 水冷673cc 縦置き水冷4サイクルV型2気筒OHV4バルブ IHIターボチャージャー付き
最高出力: 100PS/8000rpm
最大トルク: 10.5kgm/7500rpm
乾燥重量: 230kg
最高速度: 240km/h以上
前出のCX500TURBOのシリーズ車種で、両車共に1981年に欧州市場向けに販売されました。

ヤマハ

XJ650TURBO
エンジン形式: 空冷653cc 4ストロークDOHC2バルブ並列4気筒ターボ付き
最高出力: 90PS/9000rpm
最大トルク: 8.33kgm/7000rpm
車両重量: 225kg
XJ650/750Eをベースにしたモデルで、1982年に欧州市場向けに販売されました。国産メーカーでは唯一、キャブレターターボを搭載したモデルです。

脚注

本稿では、1980年代前半に国内メーカーが発売したターボチャージャー搭載モデルを中心に解説しました。

関連項目

ターボチャージャー
過給機
スーパーチャージャー
インタークーラー
カワサキ・750ターボ
カワサキ・Z1-R
スズキ・XN
ホンダ・CX
* ヤマハ・XJ

もう一度検索