ダイクォーク

ダイクォークとは

ダイクォークは、バリオンの中に存在する2つのクォークが、あたかも結合しているかのように振る舞う仮想的な状態です。1982年にリヒテンベルクによって提唱され、クォーク-ダイクォークモデルというバリオンのモデルにおいて用いられます。

ダイクォークは、残りの1つのクォークと強い相互作用をすることで、あたかも1つの粒子のように扱われます。核子の中にダイクォークが存在するかどうかは未だ議論されていますが、核子の性質や構造を説明する上で有用な概念です。また、ダイクォークと反ダイクォークの対は、X(3872)のようなエキゾチックな粒子を説明する候補としても考えられています。

ダイクォークの形成

ダイクォークを構成する2つのクォークの間にはたらく力は、色荷とスピンが反対称である場合に引力となります。このような相互作用が起こると、2つのクォークは非常に低いエネルギーで結合した状態を作り出します。この状態がダイクォークと呼ばれるものです。

ダイクォークに関する議論

ダイクォークを独立した粒子として認めない科学者も多く存在します。その理由として、ダイクォークは色荷が中性ではない2つのクォークを含んでいる可能性があり、独立した結合状態として存在できないという点が挙げられます。そのため、ダイクォークはハドロン内部を約1fm程度の大きさの複合体として自由に動き回っていると考えられています。この大きさは、ハドロンそのものの大きさと同程度です。

ラムダ粒子とシグマ粒子の実験

高速のクォークがハドロンを生成する際に形成されるラムダ粒子とシグマ粒子の実験において、ダイクォークの概念が用いられました。この実験では、クォークが真空領域をイオン化し、クォーク-反クォーク対が生成されて中間子に変換されます。バリオンが生成される際、クォークが最初に2つのクォークの安定状態を形成すると都合が良い場合があります。

ラムダ粒子とシグマ粒子は、アップクォーク、ダウンクォーク、ストレンジクォークの組み合わせで構成されます。実験の結果、ラムダ粒子は[ud]ダイクォークを含むのに対し、シグマ粒子は含まないことがわかりました。このことから、ラムダ粒子はシグマ粒子よりも形成されやすいと考えられ、実際にラムダ粒子はシグマ粒子よりも約10倍多く生成されることが確認されています。

参考文献

D. B. Lichtenberg, W. Namgung, E. Predazzi, J. G. Wills (1982). “Baryon Masses In A Relativistic Quark-Diquark Model”. Physical Review Letters 48 (24): 1653-1656.
R. Rapp, T. Schefer, E. Shuryak, M. Velkovsky (1998). “Diquark bose condensates in high density matter and instantons”. Physical Review Letters 81 (1): 53-56.

関連項目

* 三体力

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