ダイセル異人館

ダイセル異人館：近代化産業遺産としての価値

兵庫県姫路市網干区のダイセル網干工場敷地内には、2棟の異人館が現存しています。これらは「ダイセル異人館」として知られ、1910年（明治43年）に建築家設楽貞雄によって設計された歴史的建造物です。

これらの建物は、かつて日本セルロイド人造絹糸株式会社（現在のダイセル）の外国人技師のために建てられた住宅です。1987年には兵庫県「ひょうご住宅百選」、1989年には姫路市都市景観重要建築物等に選定され、2009年には経済産業省の「地域活性化に役立つ近代化産業遺産」にも認定されています。さらに、同年の認定では「姫路市の化学工業関連遺産」の一部として認められています。

文化財指定こそ受けていませんが、これらの2棟以外にもう1棟の平屋建て異人館が存在します。2019年には、ダイセル創立100周年事業の一環として、周辺エリアが再整備され、資料館がリニューアルオープンしました。見学可能な産業施設として、地域の活性化に貢献しています。

外国人技師住宅（旧図書館）：セセッション様式の影響

この建物は、かつて外国人技師の住宅として使用され、後に図書館として利用されていました。現在はセルロイド資料館として一般公開されています。1階南側にはバルコニーがあり、コロニアルスタイルの建築様式が特徴です。幾何学的な装飾が施されており、セセッション様式のデザインの影響を受けていると考えられています。

竣工は1910年で、一般公開は1989年から開始されました。資料館としてリニューアルされた現在では、地域の産業の歴史を伝える貴重な資料を展示しています。

外国人技師住宅（クラブハウス）：異なる印象を与えるもう一つの異人館

旧図書館とほぼ同型の建築様式を持つもう一つの異人館です。かつてはクラブハウスとして利用されていたと考えられています。旧図書館と異なる点は、煙突が撤去されていることと、2階南側の窓に鎧戸が付いている点です。これらの違いから、旧図書館とは異なる印象を与えています。

竣工は1910年ですが、こちらは現在非公開となっています。

アクセスと周辺環境

ダイセル異人館へは、山陽電鉄網干線山陽網干駅から徒歩約15分です。周辺にはあぼしまち交流館、旧網干銀行本店、旧赤穂塩務局網干出張所庁舎、丸亀藩網干陣屋など、歴史的な建造物が数多く残されています。これらの建造物と合わせて巡ることで、網干地区の歴史と文化をより深く理解することができます。

まとめ：歴史と産業遺産を体感できる場所

ダイセル異人館は、単なる歴史的建造物にとどまらず、日本の近代化学工業発展の歴史を物語る貴重な産業遺産です。コロニアルスタイルの美しい建物と、周辺の歴史的建造物、そしてリニューアルされた資料館は、訪れる人々に歴史と文化への理解を深める機会を提供しています。地域の活性化にも貢献するダイセル異人館は、姫路を訪れた際にはぜひ訪れていただきたい場所です。

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