ダイハツ・ミゼット

ダイハツ・ミゼット：高度成長期の象徴、軽三輪[[自動車]]の傑作

ダイハツ・ミゼットは、1957年から1972年までダイハツ工業が製造・販売していた軽自動車規格の三輪[[自動車]]です。英語で「超小型のもの」を意味するMidgetの名の通り、小型で経済的な車両として、日本の高度経済成長期を象徴する名車となりました。その誕生と成功には、当時の社会経済状況とダイハツの戦略が深く関わっています。

戦後オート三輪業界とミゼット誕生の背景

戦前からオート三輪業界で上位を占めていたダイハツは、戦後も750cc～1000ccクラスのオート三輪を生産していました。1950年代初頭には朝鮮戦争による特需景気により、通常クラスのオート三輪需要が高く、ダイハツなどの既存メーカーは増産に注力していました。一方、1949年に制定された軽自動車規格に適合する小型オート三輪は、中小メーカーが製造を始め、市場を形成しつつありました。

しかし、1953年の朝鮮戦争休戦による特需景気の終焉は、オート三輪業界にも不況をもたらしました。多くのメーカーが経営難に陥る中、1954年にはトヨタが廉価な四輪トラック「トヨペット・SKB」を発売。四輪トラックのシェア拡大は、オート三輪メーカーに大きな脅威となりました。

この状況下で、ダイハツはそれまでオート三輪を利用できなかった零細企業・商店主といった小規模事業者の小口輸送需要に着目しました。これは、当時としては非常に先進的なマーケティングリサーチに基づいた戦略でした。従業員10人以上の事業所では小型オート三輪が普及していた一方、従業員9人以下の小規模事業所ではほとんど利用されておらず、未開拓の市場が存在していたのです。

そこでダイハツは、車検免除や税金が安いといったメリットを持つ軽自動車規格に適合した軽オート三輪の開発に着手。1954年から開発を進め、1956年には試作車が完成しました。

ミゼットの革新性と成功

1957年8月に発売されたミゼットは、既存の中小メーカーが部品を流用して生産していた軽オート三輪とは異なり、ダイハツが独自に設計・製造した車両でした。小径タイヤなど合理的な設計と高い完成度を両立し、高い信頼性と実用性を備えていました。さらに、軽自動車免許で運転でき、維持費も安く、全国規模の販売網と月賦購入も可能だったため、経済的な負担が大きかった零細事業者にも購入しやすい車両となりました。

販売戦略も革新的でした。「街のヘリコプター」というキャッチコピーやCMソング、そして当時としては画期的だったテレビCMを積極的に展開。大村崑を起用したCMは大きな話題となり、ミゼットのベストセラーへと導きました。

ミゼットの成功は、他のメーカーも軽オート三輪市場への参入を促し、ブームを巻き起こしました。しかし、市場はその後、四輪軽トラックへの移行が進み、ミゼットも1972年1月に生産を終了しました。それでも、スバル360と共に1960年代を代表する車種として広く認知されており、現在でも高い人気と知名度を誇ります。1996年には、ミゼットIIとして4輪モデルも発売されました。

ミゼットのモデルバリエーション

ミゼットには、バーハンドル仕様のDK/DS型と、丸ハンドル仕様のMP型が存在します。

DK/DS型（バーハンドルミゼット）は、単座のバーハンドル仕様で、屋根と背面は幌、ドアもありませんでした。簡素な設計ながら、低価格で実用的な車両として人気を集めました。1959年には、ドア付き、2人乗りのモデルも追加されましたが、丸ハンドルミゼットが登場すると、1961年末までに販売終了となりました。

MP型（丸ハンドルミゼット）は、1959年4月に北米向けに先行発売され、同年10月より日本国内向けに発売されました。スタイリッシュなデザイン、ドア、丸ハンドル、そしてセパレートシートを採用し、使い勝手が大幅に向上しました。MP型は、改良を重ねながら1972年まで販売され、ミゼットの主力モデルとなりました。MP型は、様々な改良を経て、最終的にはクローズドルーフとなり、安全装備も充実していきました。

ミゼットは、日本の高度経済成長期を支えた国民車として、そして、日本の自動車史において重要な位置を占めるモデルとなりました。そのシンプルなデザイン、高い実用性、そして斬新な販売戦略は、後世の自動車開発にも大きな影響を与えました。

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