ダイムラー・ベンツ DB 601

DB 601エンジンの概要

DB 601は、ドイツのダイムラー・ベンツによって開発・生産された航空機用液冷V型12気筒エンジンです。このエンジンは、第二次世界大戦中にドイツ空軍のメッサーシュミットBf109に採用され、さらにイタリアのアルファロメオや日本の川崎航空機、愛知航空機などでもライセンス生産されました。これにより、イタリアのMC.202や日本の三式戦闘機など、枢軸国側の多くの航空機に使用されました。

設計と技術的特性

DB 601は、前モデルであるDB 600を基にした改良型であり、高圧縮かつ低回転の設計が特徴です。この設計は、燃料供給に制約があった当時のドイツの状況を考慮しています。DB 601には、燃料直接噴射ポンプが搭載されており、これがエンジンの特性を大きく向上させました。また、特殊な倒立V型のシリンダー配置により、機銃とプロペラシャフトの干渉を避けることができる構造になっています。

さらに、DB 601はフルカン式継手を用いた無段変速の過給機を備え、これによりエンジン性能を最大限に引き出すことが可能です。ただし、この複雑な構造は製造の難しさや重量の増加を引き起こしましたが、高度な技術力により戦争初期の時期においては依然として優位性を保っていました。バトル・オブ・ブリテンでは、燃料直接噴射ポンプの利点から、他国の戦闘機と比較しても優れたパフォーマンスを示しました。

プロペラシャフトと武装

DB 601は、中空構造のプロペラシャフトを採用しており、これにより機関砲「モーターカノン」を取り付けることが可能でした。しかし、倒立の設計上、プロペラの直径に制限があり、脚を長くする必要があったことで、機体設計においては難点も存在しました。

DB 601系のBf 109の最初の武装はエリコンMGFFでしたが、トラブルが頻発したため、後にマウザーMG 151やラインメタルMK 108といった他の機関砲に変更されています。

日本とイタリアでのライセンス生産

このエンジンは日本やイタリアなどの枢軸国でライセンス生産されました。日本陸軍は川崎でハ40として、海軍は愛知でアツタとして製造しました。興味深いエピソードとして、陸軍と海軍が同じエンジンを異なるメーカーにライセンス生産させたため、ヒトラーが「日本陸軍と海軍は敵同士か」と笑ったと伝えられています。

1936年にDB 601Aの生産が開始され、1940年代には日本海軍の十三試艦上爆撃機の開発においてもDB 601の性能が利用されました。この際、日本陸軍も遅ればせながら国産化の動きを見せたため、ライセンス生産権の取得を巡っての交渉が行われました。興味深いことに、陸海軍はライセンス契約を個別に結んだため、両者がそれぞれライセンス料を支払うことになりました。

派生型と主要諸元

DB 601は様々な派生型が存在し、いずれも性能向上が図られています。例えば、DB 601 A-1は最大出力1,100HPを誇る一方、DB 601 Eでは最高出力が1,450HPに達します。また、DB 606のように、2基のDB 601を組み合わせることにより、更なる出力向上を果たしました。

• - DB 601 A-1: 離昇出力1,100HP/2,400rpm
• - DB 601 N: 離昇出力1,175HP/2,600rpm
• - DB 601 E: 離昇出力最高1,350HP

結論

DB 601は、その高性能と多様なライセンス生産により、第二次世界大戦の航空機において欠かせないエンジンの一つと位置づけられています。競争的な航空戦の中でその利点を生かし、多くの国の航空機に搭載されました。

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