ダイモス (漫画)

ダイモス

『ダイモス』は、漫画家・横山光輝によって生み出されたSFアクション作品です。小学館の学年誌、『小学四年生』に1973年11月号から1974年3月号まで、続いて『小学五年生』に1974年4月号から1975年3月号にかけて連載されました。

物語の舞台と背景

物語は遠い昔の火星に端を発します。そこには、高度な科学文明を築き上げた二つの知的生命体、ダイモス人とフォボス人が共存していました。しかし、彼らはどちらがより優れた種族であるかを巡り、長きにわたる激しい争いを繰り広げます。この果てしない対立は、最終的に破滅的な核戦争を引き起こし、豊かな惑星だった火星を死の星へと変貌させてしまいました。

この大災害から逃れることができた一部のダイモス人とフォボス人は、新たな居住地を求め地球へと移住します。地球に降り立った後も、フォボス人は自らの種族が最も優れていると信じ、地球を支配する権利があると主張し、度々その野望を実行に移そうと画策します。一方、ダイモス人はフォボス人の侵攻を阻止し、地球の平和を守るべく抵抗を続けてきました。数千年という時が流れ、舞台は現代日本へと移ります。

ストーリー概略

人々の目を避けるように山奥に隠れ里を築き、ひっそりと暮らしていたダイモス人の村が、突如フォボス人の組織による奇襲に見舞われます。圧倒的な武力の前に村は壊滅し、主人公である少年・真介（しんすけ）を除いて、ほとんどのダイモス人が犠牲となってしまいます。この悲劇の中で、皮肉にも真介は「ひとつ子」というダイモス人としては異例の存在であったため、フォボス人から地球人と誤解され、難を逃れることになります。

村の壊滅後、唯一の生き残りとなった真介は、母から聞かされていたダイモス人の守護神、巨大ロボット『ダイモス』を発見します。代々村に伝わる力によって『ダイモス』を覚醒させた真介は、亡き同胞たちの仇を討ち、二度とこのような悲劇を起こさせないため、フォボス人に対する孤独な反撃を開始するのです。

主な登場人物と種族

ダイモス人（だいもすじん）

古代火星においてフォボス人と並び立つ高度な文明を築いた種族の一つ。彼らは以下の際立った特徴を持ちます。

• - 出生: 必ず双子として生まれる運命にあります。
• - 身体能力: 地球人をはるかに凌駕する身体能力を持ちます。
• - 超能力: 生まれつき全員が強力な超能力者であり、作中では歴史上の超能力者とされた人物の中にもダイモス人がいたという設定が示唆されます。

地球移住後、彼らの多くは日本の人里離れた山奥に隠れ住みましたが、一部は村を出て活動した者もいたようです。

フォボス人（ふぉぼすじん）

古代火星でもう一つの文明を担った種族。ダイモス人とは異なる特徴を持ちます。

• - 出生: 必ずひとつ子として生まれます。
• - 超能力: 超能力を持つのは一部の者に限られます。

地球移住後の彼らは、ダイモス人とは対照的に地球社会へ積極的に溶け込み、影響力を拡大させていきました。物語の開始時点では、大都市に自社ビルを構え、巨大な総合企業を経営しています。また、政治家やマスコミに多額の資金をばらまき、世論を自在に操ることで、ダイモスや真介を悪者に仕立て上げるほどの強大な影響力を持つに至っています。

真介（しんすけ）

本作の主人公。姓は不明。ダイモス人の村に生まれながら、異例の「ひとつ子」であったために、古くからの教えに反するとされ、村の重鎮たちから命を狙われました。母親の必死の嘆願により命は救われましたが、村人からはダイモス人の仲間としては扱われず、孤独な少年時代を送ります。この疎外されていた境遇が皮肉にも、フォボス人による襲撃時に「ひとつ子のダイモス人などいない、こいつは地球人だ」と見逃される要因となり、唯一の生き残りとなる運命を辿ります。襲撃後、真介は自らに秘められた超能力に目覚めますが、その力は通常のダイモス人を遥かに凌駕するものでした。母の言葉を頼りにダイモスの隠し場所を探し当て、守護神ロボットを復活させた真介は、フォボス人への復讐と戦いを開始します。

主要なメカニック

ダイモス

地球に移住したダイモス人が、自らの守護神として建造した巨大ロボット。村がある谷底のさらに奥深くに位置する、巨大な石造りの神殿の中に、巨石像として巧みに偽装されて隠されていました。このロボットはダイモス人の特定の命令にしか反応しませんが、ある程度の自律行動能力を持ち、学習機能によって一度戦った相手の能力を記憶し、対応することができます。言葉を発する機能はありませんが、真介の口頭での命令を理解し行動できることから、言語を認識する能力があると考えられます。外見は、横山光輝作品の『バビル2世』に登場する巨大ロボット・ポセイドンに似た人間的なプロポーションに、左右に伸びた大きな角を持つ頭部という特徴的なデザインです。作中では、以下の様な驚異的な能力を発揮しました。

• - 飛行能力: [ロケット]]や翼が見当たらないにも関わらず、自在に空を飛び回ります。
• - 光線: 目から強力な光線を放ち、ヘリコプターなどを撃墜するほか、広範囲を火の海にするほどの威力を持ちます。
• - 超音波]: 頭頂部の特徴的な部分から強力な衝撃波のようなものを発射し、岩山を一瞬で崩壊させました。
• - 電磁波操作: 全身を発光させ、周囲の[[ヘリコプターの計器や無線通信を妨害・混乱させることができます。
• - 腕部射出: 肘から先を切り離してロケットパンチのように射出可能ですが、敵への攻撃よりも、真介少年を危険から守るために腕で包み込むといった使われ方が目立ちます。
• - 温度操作: 全身の温度を自在に変化させることができます。例えば、炎の中で真介を守るために全身が霜で覆われるほど低温化したり、逆に海水を沸騰させるほどの高温化も可能です。

シードラゴン

フォボス人が持つ科学技術の粋を集めて開発された、巨大なドラゴン型の戦闘ロボット。ダイモスとの最終決戦に投入された切り札と呼べる存在です。「潜水艦より巨大」と形容されるほどの巨体を持っています。ダイモスとは異なり、内部には多くの人間が搭乗しており、軍艦のように運用されました。全身がはっきりと描かれたコマは少なく、その全貌は謎に包まれています。確認された能力は以下の通りです。

• - 潜水能力: 海中を高速で移動し、潜水艦のような運用が可能です。
• - ミサイル: ドラゴンの口からミサイルを発射し、攻撃を行います。
• - 熱線: 頭頂部の触角のようなパーツから強力な熱線を放ち、海岸を火の海にするほどの破壊力を見せました。
• - 触手: 先端にハサミ状のパーツが付いた二本の触手で、ダイモスを拘束しようと試みます。
• - 偵察鳥: 喉元のハッチから、カモメのような形状の小型無人偵察機を発進させ、情報収集に用いました。

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