ダウンズ法

ダウンズ法とは

ダウンズ法は、商業的に金属ナトリウムを製造するための電気化学的な手法です。この方法では、溶融塩である塩化ナトリウムを特別な装置「ダウンズセル」において電気分解します。ダウンズ法の創始者はアメリカの化学者ジェームズ・クロイド・ダウンズで、1922年にこの手法を開発し、1924年には特許を取得しました。

方法

ダウンズ法では、以下のものが使用されます。

• - 陽極: 炭素電極
• - 陰極: 鉄電極
• - 電解質: 加熱により溶融した塩化ナトリウム

塩化ナトリウムは結晶状態では電気伝導性が低いのですが、溶融状態になると電離して電流を伝導できるようになります。このプロセスでは、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化ストロンチウム、フッ化ナトリウムを添加することで、電解質の融点を低下させ、約600℃でも溶融状態を維持できるようにします。そのため、コストを削減することが可能です。

電気分解の反応

ダウンズ法において、おもに以下の化学反応が起こります:

• - 陽極反応:

\[ 2\text{Cl}^- \rightarrow \text{Cl}_2 + 2e^- \]
これは塩化物イオンが塩素ガスに変わる反応です。

• - 陰極反応:

\[ 2\text{Na}^+ + 2e^- \rightarrow 2\text{Na} \]
これはナトリウムイオンが金属ナトリウムに還元される反応です。

これらの反応を合成すると、全体の反応は次のようになります:
\[ 2\text{Na}^+ + 2\text{Cl}^- \rightarrow 2\text{Na} + \text{Cl}_2 \]

このプロセスにおいて、ナトリウムイオンはカルシウムイオンより優先的に還元されるため、金属ナトリウムが生成されます。すべてのナトリウムが消費されると、陽極で金属カルシウムが生成されることもあります。

生成された金属ナトリウムと塩素ガスは共に電解質よりも軽いため、液面に浮上します。陽極と陰極の間に細孔のある鉄製の隔壁を設置することによって、これらの生成物が接触せずに分離される仕組みになっています。

電気分解の条件

ダウンズ法では、理論電圧は4.07Vですが、実際の操作では8V程度が必要です。この過剰電圧は溶融塩の維持に充てられ、フランスのMSSA社やアメリカのDuPont社がこの方式で金属ナトリウムを生産しています。電流密度は約7kA/m²とされ、作業は非常に効率的です。ダウンズ法は副産物として塩素も生成しますが、これの量は他の商業方法に比べて微々たるもので、全体の生産にはあまり寄与しません。

代替法

最近では、βアルミナ固体電解質を使用した新しい方法も提案されています。この方法では、塩化アルミニウムを用いることにより融点を300℃まで下げることができ、電流密度やエネルギー効率が改善される可能性があります。特に、隔壁によって電極間距離が狭くなり、効率的な電気分解が可能です。

このように、ダウンズ法は金属ナトリウムの生産において重要な役割を果たしており、新しい技術の導入によりさらなる効率化が期待されています。

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